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事業計画書は
どう書くのか

私が実際に書いた14ページを開きながら、
何を、どの順番で埋めていくのかをお話しします。

アイリストさん

お金を借りるには事業計画書が要る、と言われました。

でも……何を書いたらいいのか、まったく分からなくて。フォーマットをダウンロードして、白いまま3日たちました。

阿部

その3日、私にもありました。よく分かります。

私は結局、14ページ書きました。2ヶ月かかりましたし、正直しんどかったです。

でも書き終わって気づいたことがあって。これ、銀行のために書く書類じゃないんですね。

えっ、違うんですか?

提出はします。でも中身は、自分の頭を整理するための道具でした。

「誰に、何を、いくらで、どうやって届けるか」を全部決めきると、開業の手順が勝手に見えてくるんです。

この記事の内容

  1. 事業計画書は、誰のために書くのか
  2. 私が書いた14ページ
  3. 前から順に書かないでください
  4. その前に、ひとつだけ決めておくこと
  5. A|誰に、何を(コンセプトとターゲット)
  6. B|いくらで(メニューから客単価をつくる)
  7. C|そこで成立するか(商圏と競合)
  8. D|どうやって集めるか(客数をつくる)
  9. E|売上は、最後に「出てくる」
  10. F|お金の計画
  11. いちばん最後に書くページ
  12. いちばん見られるところ
  13. やってしまいがちなこと3つ
  14. よくある質問
  15. まとめ

事業計画書は、誰のために書くのか

提出先はあります。融資を申し込むときに出します。だから「審査に通るために書くもの」と思われがちです。

でも、書いてみて分かったのは順番が逆ということでした。

先に結論

自分のために書くと、結果として通る書類になります。

逆に、通すために書くと、面談で答えられなくなります。
聞かれるのは書いた内容ではなく、「なぜそう考えたか」だからです。

面談で数字を聞かれたとき、自分で積み上げた数字なら説明できます。どこかから持ってきた数字だと、そこで止まります。止まるかどうかは、書いているときにもう決まっています。

私が書いた14ページ

私の場合、こういう構成になりました。使う書式によって並びは変わりますが、聞かれることはだいたい同じです。

1
創業動機なぜ開くのか。何をやってきた人なのか
2
企業理念・MVV何を大事にするお店か
3
事業経験この仕事をどれだけやってきたか
4
スタッフ計画何人で、どんな条件で働いてもらうか
5
サロンコンセプトどんな時間を提供するお店か
6
商品・サービスメニューと価格。ここから客単価が出ます
7
ターゲット・商圏誰に来てほしいか。その人はこの街にいるか
8
競合サロンどこと比べられるか。何で選ばれるか
9
販売戦略どうやって来てもらうか。ここから客数が出ます
10
初期費用・資金調達いくら必要で、どこから持ってくるか
11
収益シミュレーション初年度を月ごとに引く
12
中期経営計画3〜5年後にどうなっていたいか
13
企業概要商号・所在地・事業内容
14
設備投資計画設備資金と運転資金の内訳

14ページ……。1ページ目から順に埋めていけばいいですか?

前から順に書かないでください

そこがいちばん大事なところです。

1ページ目から書くと、たいてい途中で止まります。

創業動機は、いちばん書きやすそうに見えて、じつはいちばん最後に書くページなんです。全部決まってからでないと、まとまった言葉になりません。

私が実際に進めた順番は、こうでした。

売上を先に決めないでください。「月◯◯万円ほしいから、そのために何人集める」と逆算すると、その客数の根拠が説明できなくなります。売上は、決めるものではなく出てくるものです。

その前に、ひとつだけ決めておくこと

順番はわかりました。じゃあ、Aから書きはじめればいいんですね。

ひとつだけ、その前に決めておくことがあります。

個人事業ではじめるか、法人ではじめるかです。

えっ、そこからなんですね……。

ここが決まらないと、計画書の表紙が書けません。「屋号」なのか「商号」なのかで、書く名前が変わるからです。融資の申込書も、物件の契約名義も同じです。

1

個人ではじめる

開業までの手続きが軽くて済みます。あとから法人にすることもできます。まず1名で回してみる段階なら、身軽なほうが動きやすいです。

2

法人ではじめる

対外的な信用は得やすくなります。ただし開ける前にやることが増えます。登記、印鑑、口座開設。ここに時間とお金がかかります。

私は法人で開きました。

でも正直に言うと、1名ではじめるなら、まずは個人からでよかったと思っています。開ける前にやることが、思っていたより増えました。

もちろん、人を雇う前提だったので法人にした理由はあります。ただ「とりあえず法人」ではなかったかと、いまは思います。

この判断は、税理士さんと一緒に決めてください。私も相談して決めました。

「まだ何も決まっていないから相談できない」と思わなくて大丈夫です。むしろ決まっていない段階のほうが、選べる幅があります。開業の何ヶ月も前から相談できます。

A|誰に、何を(コンセプトとターゲット)

いちばん最初に決めるのがここです。ここが決まらないと、価格も、内装も、集客も決められません。

ターゲットって、「20代〜40代の女性」みたいな感じでいいんですか?

そこで止めないでください。それだと、この街にいる女性のほとんどが入ってしまいます。

私が書いたのは、年代のあとに「なぜ、その人が、うちを選ぶのか」まででした。

1

どんな人か

年代、住まいか職場か、美容にどれくらい使う人か。「誰かのためではなく、自分のために美容をしている人」のように、動機まで書けると輪郭が出ます。

2

何を求めているか

仕上がりだけではありません。静かに過ごしたい、隣を気にしたくない、話しかけられたくない。ここが内装と接客に直結します。

3

どう探すか

何と検索して、どこを見て決めるのか。「恵比寿 まつ毛 個室」のような実際の言葉で書きます。これがそのまま集客の設計図になります。

4

その人はこの街にいるか

ここが商圏の話につながります。想像ではなく、住んでいる人・働いている人の実感や、街を歩いた印象まで書きました。

コンセプトのほうは、私は一文で書きました。長い説明ではなく、お店を言い表す一文です。この一文が、あとで内装・メニュー名・写真の選び方まで全部を決めてくれます。

B|いくらで(メニューから客単価をつくる)

ここは表を1枚つくります。列は4つです。

メニュー名何を提供するか
価格税込でいくらか
売上シェア全体の何%を占める想定か
内容お客様に向けた説明文

この「売上シェア」の列がポイントです。全メニューを合計して100%になるように置きます。そして、価格×シェアを足し合わせると、客単価が計算で出てきます。

私はこれで、客単価が1万円台の前半になりました。

大事なのは金額そのものではなくて、「なぜその単価になるのか」を自分で説明できる状態になることです。

ここを「たぶん8,000円くらい」で置いてしまうと、そのあとの数字が全部あやふやになります。

もうひとつ。シェアを置いていくと、「これは何%を狙うメニューなのか」がはっきりします。看板にするもの、単価を上げるもの、入口になるもの。表を埋めるだけで、メニュー構成の意図が自分で見えてきます。

C|そこで成立するか(商圏と競合)

競合って、近くのお店を何件か調べればいいですか?

件数を数えるだけで終わらせないでください。

私も最初に数えました。マップで100件以上、掲載サイトでは300件以上ありました。

でもその全部と戦うわけではありません。ここで決めるのは、「そのうちのどこと比べられるか」です。

私は、単価帯で線を引きました。半個室で落ち着いた時間を出すお店なので、安さで選ばれるお店とは並びません。同じくらいの価格帯のお店が競合になります。

そのうえで、3店だけ選んで、こう書きました。

規模席数とスタッフ数。自分の店と比べられる大きさかどうか
何を推しているか力を入れているメニュー、受賞歴、打ち出し方
だいたいの単価公開されている価格から読み取れる範囲で
自分は何で選ばれるかここがこのページの本体です。「うちのほうが良い」ではなく「うちはこの人に向いている」と書きます

他店を悪く書かないでください。読む人はその業界を見慣れています。悪く書いた瞬間に、書いた人の見え方が下がります。違いだけを書けば十分です。

D|どうやって集めるか(客数をつくる)

ここが、事業計画書でいちばん差が出るページだと思っています。

やり方

集客の手段ごとに、月に何人来るかを積み上げます。

そして1行ずつ、「なぜその人数なのか」の根拠を隣に書きます。

私が書いた行は、こういうものでした。

1

前の職場からのお客様

指名の総数 × 声をかけられる割合 ÷ 来店の周期。掛け算の式そのものを書きます。「たぶん来てくれる」では根拠になりません。

2

掲載媒体

どのプランで、どんな運用をするか。エリア担当者と打ち合わせ済みなら、それも書きます。

3

店頭・ポスティング

配る枚数 × 反応率。反応率は控えめに置きました。大きく見せるより、外さないほうが大事です。

4

SNS・紹介・地図アプリ

それぞれ何人を見込むか。ここも根拠を1行ずつ。

この積み上げで、私は計画上の来店数を出しました。そのとおりになったかどうかは、また別の話です。でも、根拠を書いてあったので、面談では説明できました。

ここでひとつ、正直に言っておきますね。

この数字は、当たらなくていいんです。大事なのは、外れたときにどこが外れたのかが分かる形になっていること。

ひとつの数字で「月◯◯人」と書いてあると、外れたときに打ち手がありません。手段ごとに分けてあれば、どこを増やせばいいかが見えます。

E|売上は、最後に「出てくる」

ここまで来ると、もう計算するだけです。

この順番でしか出せません

B(客単価)× D(客数)= 売上

先に売上を決めて、そこから客数を割り戻すと、
その客数をどう集めるのかが説明できなくなります。

そして収益シミュレーションは、年間の合計ではなく月ごとに引いてください。開業してすぐは、当然ながら少ないところから始まります。何月にいちばん苦しくなるのかを、開ける前に知っておくためのページです。

F|お金の計画

ここは表が3種類あります。

1 スタッフ計画と人件費

誰が、いつ入って、いくらで、どれだけ売上をつくる想定か。私は1人ずつ「開業時/2年後」のキャリアと報酬を書きました。人件費は、いちばん重い固定費です。

2 初期費用と資金調達

何にいくらかかって、自己資金と借入をどう組み合わせるか。この2つの表は、合計が一致していないと必ず聞かれます。詳しくは別の記事に書きました。

3 設備資金と運転資金の内訳

提出先の書式は、この2分割になっていることが多いです。保証金や内装は設備、礼金や前払家賃は運転。迷ったら聞いてください。聞いて怒られる場所ではありません。

いちばん最後に書くページ

創業動機、理念、これまでの経験。ここを最後に回してください。

いちばん書きたいところなのに、最後なんですね。

だからこそ、なんです。

先に書くと、気持ちだけの文章になります。「やりたいです」「頑張ります」で終わってしまう。

でも全部決めたあとに書くと、「だからこの店をやります」という文章になります。同じことを書いていても、読んだときの説得力がまるで違います。

私はここに、何をやってきたかを具体的に書きました。業界にいた年数、どんな仕事をしてきたか、そこで何を学んだか。そして、開業のために実際に準備してきたことも。

「やりたい」ではなく「もう動いている」。ここが伝わると、読む人の見方が変わります。

いちばん見られるところ

数字の根拠いくらか、ではなく「なぜその数字か」。1行ずつ根拠が書いてあるかどうかで、読まれ方が変わります
表と表のつじつま初期費用の合計と、資金調達の合計。ここがずれていると必ず聞かれます。提出直前にもう一度足し算してください
自己資金の貯め方金額より、コツコツ積み上げた跡が通帳で見えるか。計画どおりに実行できる人かどうかとして読まれます
この仕事をどれだけやってきたか未経験の分野ではないこと。技術も、集客も、経験があるなら具体的に書きます

やってしまいがちなこと3つ

1 数字から書きはじめる

「月◯◯万円ほしい」から逆算すると、客数の根拠がなくなります。単価 → 客数 → 売上の順でしか、説明できる数字にはなりません。

2 競合を「◯件あります」で終える

件数は調べたことの証明にはなりますが、戦略にはなりません。そのうちのどこと比べられるか、そこで何を選ばれる理由にするか。決めるところまでが競合のページです。

3 1ページ目から書いて力尽きる

創業動機は最後です。先に書くと、決まっていないことが多すぎて何度も書き直すことになります。私も、最初の1週間をここで溶かしました。

よくある質問

何ページくらい書けばいいですか?

枚数に決まりはありません。私は14ページになりましたが、厚さより「聞かれたことに答えられるか」です。埋まっていないページがあるほうが気になります。

手書きでもいいですか?

読めれば問題ないと思います。ただ、数字の表だけは表計算ソフトで作ることをおすすめします。項目を足すたびに合計が動くので、手計算だとほぼずれます。

どれくらい時間がかかりますか?

私は2ヶ月かけました。毎日ではなく、決まらないところで止まっては考える、の繰り返しです。止まる時間も含めて、この作業の一部だと思っています。

数字が計画どおりにならなかったら、まずいですか?

計画は計画です。大事なのは、外れたときにどこが外れたか分かる形になっていること。手段ごとに分けて書いてあれば、次の打ち手が見えます。

誰かに見てもらったほうがいいですか?

一度、自分以外の目を通したほうがいいと思います。自分だけで書くと、前提を書き忘れます。自分にとって当たり前のことほど、抜けます。

個人ではじめて、あとから法人にできますか?

できます。実際にそうされる方は多いです。ただ、そのときは手続きが必要になるので、切り替えるタイミングも含めて税理士さんに相談してください。「あとから変えられる」は、最初を身軽にしていい理由のひとつだと思っています。

まだ物件が決まっていないのに書けますか?

書けます。というより、物件が決まる前に書くほうが正しい順番です。家賃の上限も、必要な広さも、この計画から出てくるからです。

まとめ

持ち帰ってほしいこと

1. 書きはじめる前に、個人か法人かを決める(表紙が書けません)

2. 事業計画書は自分のための道具。結果として通る書類になります

3. 1ページ目から書かない。創業動機は最後

4. 順番は 誰に → いくらで → どこで → どう集めるか → 売上

5. 売上は決めるものではなく、出てくるもの

6. 客数は手段ごとに分けて、根拠を1行ずつ

7. 競合は件数ではなく、どこと比べられるかを決めるページ

白いままの3日間が、もったいなかったです。

順番が分かっただけで、書けそうな気がしてきました。

それが、この記事でいちばん伝えたかったことです。

止まるのは、書く力がないからではなくて順番のせいのことが多いんです。

次は、この計画のいちばん重い費目である物件の話を書きますね。

この記事は、私自身が2025年に恵比寿で1店舗を開業した経験と、そのときに作成した事業計画書をもとに書いています。書式や求められる項目は提出先によって異なります。融資の可否や条件については金融機関に、税務・労務の手続きについては税理士・社会保険労務士にご相談ください。

阿部弘康

阿部 弘康

株式会社CALM TOKYO 代表取締役
恵比寿でまつげパーマ&眉毛アイブロウサロンを運営

美容業界18年。化粧品メーカーの営業、美容サロン専門の広告会社を経て、サロン専門のコンサルタントとして独立しました。集客に関する書籍を2冊出しています。
2025年、恵比寿に自分たちの店を開きました。技術は、表参道で17年やってきたアイリストの妻が。経営とマーケティングは私が見ています。人の店を見てきた側と、自分で開いた側。その両方から書いています。

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