探すのは長いです。でも勝負は、最後の2〜3ヶ月。
そこで何を見て、何を捨てたかを書きます。
物件って、どうやって探したらいいんでしょう。
ネットで見てはいるんですけど、いいのかどうか、判断がつかなくて。
その状態、正常です。私も同じでした。
20件以上見て、1年以上かかりました。
1年……! そんなにかかるんですか。
ただ、誤解しないでほしいのは、1年ずっと動いていたわけではないということです。
本当に勝負なのは、最後の2〜3ヶ月です。申し込んで、審査を受けて、契約するまで。物件は契約できないと意味がないので、そこに全部かかっています。
今日は、その2〜3ヶ月で何を見て、何を捨てたかを書きますね。
1. 不動産屋には、最初に全部言う。隠すと後で崩れます
2. 譲れないものは、ターゲットが決めてくれます。自分で悩まなくていい
3. 融資が決まる前に押すなら、先に逃げ道をつくる
この記事の内容
開業の9つのステップのなかで、物件だけは性質が違います。他の8つは「やれば進む」ものですが、物件は出会えないと進みません。
私の場合はこうでした。
探す期間が長いのは、悪いことではありません。その間に、目が育ちます。
1件目に見た部屋と、20件目に見た部屋では、見ているところがまるで違いました。
だから、物件だけは早く動きはじめて大丈夫です。事業計画書より先に見はじめても、無駄になりません。ただし、契約は計画が固まってから。ここは崩さないでください。
「まつげサロンをやります」って、先に言うと断られやすくなりませんか?
言ってください。私は最初に、全部伝えました。
断られる数は増えます。でも後で崩れるより、ずっといいんです。
私が最初に伝えたのは、この4つです。
まつげサロン。お客様が来る店ですと、はっきり言います。住居として借りて後から店にする、というやり方はしないでください。
間仕切りをつくりたい、照明を変えたい。どこまで手を入れていいかは物件ごとに違います。ここを黙っていると、契約後に「できません」となります。
何時から何時まで、定休日はいつか。マンションの場合、夜遅い時間の出入りを気にされることがあります。
ここが後から効きます。看板の可否は、集客に直結します。私はここで妥協することになりました(後述します)。
隠して借りるのは、いちばん高くつきます。後で発覚すると、契約解除の話になることもあります。開けなくなったら、それまでにかけたお金が全部消えます。
実際に断られたケースを、正直に書きます。どれも、事前に分かっていれば避けられたかというと、そうでもありません。
まだ融資が決まっていない段階だと、「本当に払えるのか」を見られます。自己資金の状況を示せるかどうかが効きます。
良い物件には、同時に複数の申込が入ります。条件が同じなら、審査が早く通るほうが選ばれます。ここは運の要素も大きいです。
「この工事はできません」と言われて、それでは店にならない、となったケース。だからこそ、工事の話は最初にするべきなんです。
断られると、けっこう落ち込みそうです……。
落ち込みます。私も落ち込みました。
ただ、いま振り返ると断られてよかった物件もあります。あのとき通っていたら、いまの店にはなっていません。
ここが今日いちばん伝えたいところです。
「どの順番で見るか」より、「何を妥協できて、何を妥協できないか」を先に洗い出す。
そして、その洗い出しは自分の好みで決めるものではありません。
ターゲットが決めてくれます。
私が最後まで譲らなかったのは、エレベーターがあることでした。
エレベーター、ですか。意外です。
うちのターゲットは40代以上の女性です。妻のお客様には、60代以上の方も多くいらっしゃいます。
その方たちに、毎回階段を上がってもらう。それは無理だと思いました。
1回なら大丈夫かもしれません。でも、まつげサロンは1ヶ月に1度、通っていただくお店です。何年も続きます。
だから、これは私の好みではありません。事業計画書でターゲットを決めていたから、自動的に決まったことです。
ここで、順番の意味が効いてきます。ターゲットが決まっていないまま物件を見ると、「なんとなく良さそう」でしか判断できません。決まっていれば、その人が毎月通えるかという一本の基準で見られます。
逆に、妥協したものも書きます。
いまの店は代官山から徒歩2分、恵比寿から徒歩5分です。
これでも、私にとっては妥協でした。もっと近い物件を探していたんです。
これは大きい妥協でした。通りすがりのお客様は、まず来ません。そのぶん、掲載媒体とSNSと紹介で埋めるしかない、という前提でスタートすることになりました。
代官山2分でも妥協なんですか……。基準が高いです。
ただ、この2つを妥協したからエレベーターを取れたとも言えます。
全部は取れません。だから先に、順位をつけておくんです。その場で迷うと、決めきれずに逃します。
ここは、正直に書きます。
どうしても契約したい物件に申し込みを入れたとき、私は生命保険を解約しました。
お金が足りなかったからではありません。その契約金を払って、万が一そのあと融資が通らなかったら、破産すると思ったからです。
……そこまで追い込まれるんですね。
別の記事で「融資が決まってから、物件を契約する」と書きました。それが原則です。
ただ、正確に言うとこうです。
融資が「決まる」のと、お金が「入る」のは、別の日です。
そして物件の契約金は、お金が入る前に払います。
この期間、手元は自分の現金だけで戦うことになります。
私が驚いたのは、物件の契約費用の高さでした。保証金、礼金、仲介手数料、前払家賃、保証会社。これが一度に出ていきます。エリアにもよると思いますが、想像していた金額ではありませんでした。
だから私は、押す前に手元の現金を厚くしました。攻めるためではなく、落ちたときに死なないためです。
これが正解だったかは、いまも分かりません。
おすすめもしません。保険を解約するかどうかは、家庭の状況によってまったく違います。
でも、ひとつだけ言えることがあります。「押すかどうか」の前に、「落ちたらどうなるか」を先に数えてください。それを数えないまま押すのが、いちばん危ないです。
うちはマンションの一室です。テナントとは確認することが違います。
事前に聞いてはいたんです。でも、足りませんでした。
とくにエアコンなどの機器です。
「ついています」と言われても、何年前のものか、どの位置についているか、店として使えるかは別の話でした。
これを助けてくれたのが、内装業者さんを内見に連れて行ったことです。
間仕切りを入れられるか、照明を動かせるか。持ち帰らずに、その場で判断してもらえます。
分電盤、配管、天井の高さ、床の状態。私が見ていなかったところを、必ず見ていました。
「一緒に見てもらってよかった」と思う場面が、何回もありました。
物件を決める前に内装業者さんを見つけておく。順番としては、これが正しいです。
物件は、いつから探しはじめればいいですか?
早くて大丈夫です。探すだけならお金はかかりませんし、見た数だけ目が育ちます。ただし契約は、事業計画と資金の目処が立ってから。ここは崩さないでください。
内見に、誰か連れて行ったほうがいいですか?
内装業者さんを連れて行ってください。私はこれに何度も助けられました。「この工事はできますか」をその場で聞けるかどうかで、判断のスピードが変わります。
看板が出せない物件は、やめたほうがいいですか?
やめる必要はありません。ただ、通りすがりのお客様は来ない前提で、集客の計画を組み直してください。掲載媒体・SNS・紹介の比重が上がります。うちもそうしています。
「まつげサロンをやる」と最初に言うと、断られやすくなりませんか?
断られる数は増えます。でも、隠して借りるほうがはるかに危険です。後で発覚すると、契約解除の話になることもあります。それまでにかけたお金が全部消えます。
融資が決まる前に契約するのは、危険ですか?
危険です。原則は「融資が決まってから契約」です。それでもどうしても、というときは、落ちたときにどうなるかを先に数えてください。数えないまま押すのが、いちばん危ないと思っています。
良い物件がなかなか出てきません。
出てこないのが普通です。本当にこれと思う物件には、なかなか出会えません。不動産屋さんに足繁く通うこと、開きたいエリアを実際に歩いて空いている区画を見つけたら問い合わせること。この2つが、いちばん効きました。
1. 探すのは長い(私は20件以上・1年以上)。でも勝負は最後の2〜3ヶ月
2. 不動産屋には最初に全部言う(業種・工事・営業時間・看板)
3. 譲れないものは、ターゲットが決めてくれる
4. 全部は取れない。先に順位をつけておく
5. 融資が「決まる」日と、お金が「入る」日は違う
6. 押す前に、落ちたらどうなるかを数える
7. 内装業者さんを、内見に連れて行く
「何を妥協できないか」を先に書き出す、というのがすごく腑に落ちました。
紙に書いてみてください。3つでいいです。
書けないときは、たいていターゲットが決まっていません。そのときは物件ではなく、そちらに戻ってください。
次は、決まった部屋をどう作るか。内装の話です。実際の図面を見せながら書きました。
この記事は、私自身が2025年に恵比寿で1店舗を開業した経験をもとに書いています。物件を営業に使えるかどうか、必要な設備要件は物件ごと・地域ごとに異なるため、管理規約・貸主・所轄の保健所にご確認ください。融資の可否や条件については金融機関に、契約条件については宅地建物取引士のいる不動産会社にご相談ください。保険の解約その他の資産に関する判断は、ご家庭の状況によって大きく異なります。
