工事は2週間でした。でも、そこに至るまでが2〜3ヶ月。
実際の図面を見せながら、何を決めたかを書きます。
内装って、どこまでやればいいんでしょう。
お金をかければ良くなるのは分かるんですけど、どこを削っていいのかが分からなくて。
そこが本題です。今日は実際の図面を見せながら話しますね。
先に結論を言うと、削るところと削らないところは、コンセプトが決めます。自分の好みでも、予算でもありません。
1. 工事期間は2週間。でも準備に2〜3ヶ月かかります
2. 打ち合わせは6回。ここで全部が決まります
3. 削るところと削らないところは、コンセプトが決める
この記事の内容
意外に思われるかもしれませんが、実際に工事をしていた期間は2週間です。
「内装に3ヶ月かかる」と聞くと、ずっと工事しているように思いますよね。
違います。ほとんどは、決めている時間です。
私の場合、業者さんと会ったのは全部で6回でした。
1回あたり1〜2時間。合わせると、6〜12時間ほど話したことになります。
そんなに話すんですね。もっと「お任せ」なのかと思っていました。
お任せにすると、できあがってから「思っていたのと違う」になります。
私の工事は、追加費用も工期の遅れもありませんでした。それは腕がいいからというより、事前に全部決めきったからだと思っています。
これから内装をやる方に、いちばん先に伝えたいのはこれです。打ち合わせをしっかりやってください。
ここは正直に書きます。私は、相見積もりを取っていません。1社だけです。
前職の仲間にお願いしました。「自分の店を出すときは、この人に頼む」と、ずっと前から決めていたからです。
……私には、そういう人がいません。
ですよね。私のケースは、あまり参考になりません。
そういう人がいないなら、3社くらいは相見積もりを取っていいと思います。
ただし、金額だけを並べて安い順に選ぶのはおすすめしません。見積書は、業者によって書き方も項目の粒度も違います。同じ工事に見えて、中身が違うことがあります。
図面だけで見積もりを出す業者と、実際に見に来る業者では、あとから出る追加費用がまったく違います。
全部「できます」と言う人は、あとで困ります。できないことを、その場で言ってくれるかを見てください。
こちらが「予算内に収めたい」と言ったとき、どこを削れるかを一緒に考えてくれるか。ここが本当の差です。
住宅の内装と、店の内装は違います。保健所の要件を知っているかだけでも、話の早さが変わります。
最初の見積もりから、いくらか削りました。何を削ったかを具体的に書きます。
全面を張り替えるのをやめました。もともとの壁を活かせるところは、そのまま使っています。お客様が見る面だけ手を入れれば、印象は変わります。
全部を壁で仕切ると、金額が跳ね上がります。梁の下にパイプを吊って、カーテンレールを通しました。これだけで、区切られた空間になります。
受付のカウンターは造作せず、既製品を使っています。図面にも「既製品」と書いてあります。ここは作り込まなくても成立する場所でした。
もうひとつ、図面を見て気づいてほしいのが仕切り壁の高さです。
図面の凡例に 「パーティション H1400程度」 と書いてあります。
天井まで作っていません。1400ミリ、腰より少し高いくらいです。
それでも、寝ている人の視界はしっかり区切られます。
天井まで作れば「個室」になりますが、金額も上がります。まつげの施術は、横になって目を閉じている時間です。だとすると、必要なのは完全な密室ではなく「隣が見えないこと」でした。
逆に、削らなくてよかったと思っているものがあります。
パウダールームの化粧台です。
ここは造作にしました。壁に固定して、ミラーをつけて、2人並べるようにしています。
理由はひとつです。既製品ではしょぼい。うちのコンセプトに合うのは、手作りのほうでした。
受付は既製品で、化粧台は造作。その差はどこから来るんですか?
お客様が、いちばん最後に自分の顔を見る場所だからです。
施術が終わって、鏡の前でメイクを直して、帰る。その数分の印象が、その日の記憶になります。
受付は、通る場所です。化粧台は、止まって過ごす場所です。同じお金を使うなら、止まる場所に使いました。
「通る場所」は削れます。「止まる場所」は削れません。
そして、どこが止まる場所かを決めているのはコンセプトです。
コンセプトが決まっていないと、この判断ができません。
実際の図面を出します。細かくて読めなくて大丈夫です。
見てほしいのは青い文字の量です。これが、6回の打ち合わせで決めたことです。
図面に書き込まれていた指示を、いくつか抜き出します。これが「打ち合わせをしっかりやる」の中身です。
この図面が、そのまま「打ち合わせをしっかりやった」の証拠です。
逆に言うと、図面の書き込みが少ないまま着工したら危ないということです。決めていないことは、現場で誰かが決めることになります。
物件の記事で書いたとおり、うちは看板が出せません。
その代わりに図面に書いてあるのが、これです。
玄関ドア サイン設置/アルミ複合板 接着想定
ドアに直接、板を貼る。それだけです。でもこれがないと、お客様は自分の部屋に着いたことが分かりません。
マンションの一室でやるなら、ここは必ず考えてください。
お客様は、エレベーターを降りて、廊下を歩いて、ドアの前に立ちます。そのあいだ、ずっと「合っているかな」と思っています。
ドアに何もないと、その不安のまま入ってくることになります。
テナントとは、気にすることが違います。
うちは天井高が2400ミリほどです。仕切りを天井まで作ると、一気に圧迫感が出ます。H1400にしたのは、金額だけの理由ではありません。
襖、敷居、まぐさ。外すのか、残すのか、壊すのか。1つずつ決めることになります。残せば、そのぶん安く済みます。
図面でも独立した部屋になっています。ここは保健所の要件に関わるので、間取りを考える最初の段階で場所を決めてください。
資材の搬入も、工事の音も、他の住人の方に関わります。管理会社への連絡と、近隣へのご挨拶は業者さんと相談して段取りしてください。
間取り・設備の要件は物件ごと、地域ごとに違います。図面ができた段階で、所轄の保健所に相談に行ってください。着工前に確認しておけば、作り直しを避けられます。
相見積もりは何社取ればいいですか?
3社くらいでいいと思います。ただし金額だけで選ばないでください。現地調査に来てくれるか、「できません」と言ってくれるか、削る提案をしてくれるか。ここを見てください。
工事期間はどれくらいみればいいですか?
私の場合は2週間でした。ただし、その前の準備に2〜3ヶ月かかっています。スケジュールは工事期間ではなく、現地調査から逆算してください。
打ち合わせは何を話せばいいですか?
迷ったら図面に書き込めるレベルまで具体的にすると考えてください。「おしゃれにしたい」ではなく「この仕切りは高さいくつで、どこに留めるか」です。書けないことは、決まっていないことです。
仕切りは、天井まで作ったほうがいいですか?
私はH1400にしました。天井が低い物件なので、天井まで作ると圧迫感が出ます。それに、施術中のお客様は横になって目を閉じています。必要なのは密室ではなく「隣が見えないこと」でした。
どこを削って、どこを削らないかが分かりません。
「通る場所」と「止まる場所」で分けてみてください。お客様が止まって過ごす場所は削らない。通り過ぎる場所は削る。それでもまだ迷うなら、コンセプトが決まっていないのかもしれません。
工事中は、現場に行ったほうがいいですか?
行ってください。私は1回行きました。できあがってから「違う」と言うのが、いちばん高くつきます。
1. 工事は2週間。準備が2〜3ヶ月。逆算は現地調査から
2. 打ち合わせは6回・各1〜2時間。ここで全部が決まります
3. 相見積もりは3社。金額ではなく削る提案をしてくれるかで見る
4. 削れるもの:壁紙・仕切り(カーテンで代用)・家具(既製品)
5. 仕切りは天井まで作らなくていい(うちはH1400)
6. 「通る場所」は削れる。「止まる場所」は削れない
7. 図面に書き込めないことは、決まっていないこと
「通る場所」と「止まる場所」、すぐに使えそうです。
紙に間取りを書いて、お客様が止まるところに丸をつけてみてください。
丸がついたところにお金を使う。それ以外は、削っていい場所です。
次は、そこに入れる器具の話を書きますね。
この記事は、私自身が2025年に恵比寿で1店舗を開業した経験と、そのときに内装業者に作成いただいた図面をもとに書いています。掲載している図面は許可を得て公開しています。工事の可否・必要な設備要件は物件ごと、地域ごとに異なります。美容所としての要件は所轄の保健所に、工事の内容や区分所有建物での制約については管理会社・貸主・施工業者にご確認ください。
