開業資金って、どこから手をつければいいんですか。
内装屋さんに見積もりをお願いしたら、たぶん出してくれると思うんですが……それを待っていればいいんでしょうか。
見積もりを待つ前に、やることがあります。
項目を、先に全部書き出すことです。金額は空欄でかまいません。
金額が入っていないのに、意味あるんですか?
あります。資金計画で怖いのは、金額が多いことではなく、項目が抜けていることだからです。
抜けた項目は、あとから必ず出てきます。そのときには、もう借入額は決まっています。
この記事の内容
私が事業計画書に作った表です。金額は伏せていますが、項目はそのまま出します。
「開業プロデュース料」は、私の場合の項目です。開業の支援を受けない方には、この行は要りません。要らない項目は消してください。
最後の運転資金だけ、性質が違います。後半で書きます。
物件のところが、細かく分かれているんですね。
そこがいちばん抜けやすいからです。
「敷金・礼金・仲介手数料・前払い家賃・火災保険・保証会社」で6行。ひとまとめに「物件費用」と書くと、必ずどれかが抜けます。
1回で払うものは、1行に分ける。
「まとめて◯◯費」とすると、あとで「これ入ってたっけ?」が分からなくなります。
書き出したら、次は2つに分けます。
これは私が勝手に決めた分け方ではありません。公庫に出す書類が、この2つに分かれているからです。申込書にも、設備投資計画書にも、この欄があります。
形が残るもの、そして戻ってくるもの。
店舗保証金(敷金)/内装工事費/美容器具/設備(家電・家具・什器)
消えていくもの。
店舗礼金/仲介手数料/前払い家賃/火災保険料/保証会社/開業材料費/広告宣伝費/その他諸経費(士業)/開業プロデュース料/運転資金そのもの
敷金は設備で、礼金は運転なんですね。同じ物件のお金なのに。
そこが分かれ目です。敷金は、出ていくときに戻ってくる可能性のあるお金。礼金は戻りません。
ここは私の分け方なので、迷ったら公庫に確認してください。分け方が違っても、書類は直せます。
分け方に正解を求めすぎないでください。大事なのは「どちらに入れたか」より、1項目も漏らさないことです。分類は、あとから相談して直せます。
細かい話に見えますが、ここを1列にまとめると、あとで必ずずれます。
費用項目 / 金額(税抜) / 消費税 / 合計
この4列にします。合計の列は、足し算にしておきます。
理由は単純で、見積書は税抜で来ることが多いからです。内装も、器具も、什器も。
そして、税抜の数字だけを並べて足すと、総額が1割ぶん小さく見えます。
1割です。開業の総額に対しての1割なので、見過ごせる大きさではありません。
逆に、敷金・保証金・火災保険のように消費税がかからないものもあります。だから「全部に1.1をかける」でもずれます。1行ずつ持つのがいちばん確実です。
14項目の最後、運転資金です。ここだけ、見積書が存在しません。自分で決める数字です。
開業後の経費の、約2ヶ月分。
2ヶ月分。……足りましたか?
できれば3ヶ月は欲しいところです。
欲を言えば、もっと欲しい。ここは多いに越したことがありません。
理由は、開けてすぐは売上より支払いのほうが先に来るからです。家賃も、材料も、掲載料も、人を入れていれば給与も、初月から出ていきます。
そして売上は、立った日にお金になるわけではありません。カード決済も、掲載媒体の精算も、入金は先です。「売れているのに、口座が減る」時期が必ずあります。
生活費は、この運転資金とは別に持ってください。ここを混ぜると、判断がにぶります。工事期間中も生活は続きます。記事1に書いた4つ目の理由が、まさにここでした。
私は、この初期費用の計画を2回作っています。最初に作ったものと、あとで作り直したもの。
作り直したほうには、最初になかった項目がいくつも増えていました。そこを出します。
見積書が来ない費用です。
内装も器具も、頼めば紙が来ます。紙が来ないものだけが、計画から抜けました。
言われてみると、全部そうですね……。
研修費は、私も考えていませんでした。
ここは、先に14項目の表に行を足しておいてください。金額はあとで入れれば大丈夫です。
行があるだけで、抜けません。
14項目のうち「その他諸経費(士業契約等)」の話です。ここは、私自身が途中で組み替えました。
社労士
最初の見積もり士業の中でいちばん大きい金額でした。見直した
実際契約をやめて、税理士に紹介してもらった別の社労士に変えました。結果として当初の6分の1以下です。
司法書士
最初の見積もり項目そのものがありませんでした。抜けていた
実際法人登記の費用として、まとまった額が必要でした。法人で開くなら、必ず出ます。
6分の1以下って……そんなに変わるんですか。
変わりました。士業の費用は、言い値ではありません。
それと、紹介で変わります。税理士さんに「社労士を紹介してください」と言えるかどうかで、この差が出ました。
1社目の見積もりを、そのまま計画に入れないでください。
内装も器具も相見積もりを取るのに、士業だけ最初の1社で決めてしまう人が多いと思います。私もそうでした。
そして法人で開くなら、司法書士の費用を最初から行に入れてください。私は入れていませんでした。個人事業なら要りません。個人か法人かを先に決めておくのは、こういう理由もあります。
14項目を書き出して、税を足すと、総額が出ます。その下に、もう1つ表を作ります。
自己資金 + 借入 + その他 = 調達できる額
この額と、上で出した総額を合わせます。
なるべく、合わせてください。ぴったり合わせるのは簡単ではありませんが、ずれているなら、ずれている理由が説明できる状態にしておいてください。
そのままでは足りません。削るか、自己資金を足すか、借入を増やすか。この3つしかありません。
借りすぎかもしれません。返すのは自分です。融資の記事にも書きましたが、私はここを軽く見ていました。
この表を作ると、「いくら借りるか」が計算で出てきます。先に借入額を決めるのではなく、積み上げた結果として出す。順番はこちらです。
ここまでで、まだ一度も削っていません。それでいいんです。
1. 書き出す → 2. 分ける → 3. 税を足す → 4. 合計を出す → 5. それから削る
先に削ると、何を削ったのか分からなくなります。
そして「そもそも入れていなかったもの」と「削ったもの」の区別がつかなくなる。これがいちばん危ない状態です。
削る順番そのものは、親記事に書きました。内装から疑う。次に集客と販促。人は売上が立ってから。運転資金と生活費は削らない。
→ 削る順番はこちら抑えられる費用と、抑えられない費用項目は、14個ないとダメですか?
いいえ。お店の形によって、要らない項目があります。開業の支援を受けないなら「開業プロデュース料」は要りませんし、個人事業なら司法書士の費用も要りません。足りないものを足して、要らないものを消してください。数より、漏れがないことが大事です。
見積もりが揃っていないのに、書き出す意味はありますか?
あります。金額は空欄でかまいません。先に行を作っておくと、見積もりが来たときに入れるだけになります。逆に、見積もりが来てから表を作ると、紙が来なかった費用が最後まで表に載りません。
「設備資金」と「運転資金」の分け方が分かりません。
おおまかには設備資金=形が残るもの・戻ってくるもの、運転資金=消えていくものです。うちは保証金(敷金)を設備、礼金・仲介手数料・前払い家賃を運転にしました。これは私の分け方なので、迷ったら公庫にご確認ください。分類はあとから直せます。
運転資金は、何ヶ月分がいいですか?
私は2ヶ月分で置きましたが、できれば3ヶ月は欲しいと思っています。欲を言えば、もっと。開けてすぐは売上より支払いが先に来ますし、売上が入金になるまでにも時間差があります。生活費は、これとは別に持ってください。
消費税は、まとめて1.1倍ではダメですか?
ずれます。敷金・保証金・火災保険のように、消費税がかからない項目があるからです。1行ずつ「金額(税抜)・消費税・合計」で持つのがいちばん確実です。
士業の費用は、どれくらい見ておけばいいですか?
金額は状況で変わるので書きません。ただ私は、社労士を途中で変えて当初の6分の1以下になりました。1社目の見積もりをそのまま入れないでください。税理士に社労士を紹介してもらうなど、聞いてみる価値はあります。
合計と調達額が、どうしても合いません。
なるべく合わせてください。総額が大きいなら、削るか・自己資金を足すか・借入を増やすかの3つです。逆に調達が大きいなら、借りすぎかもしれません。合わないときは、たいていどこかの項目が漏れているか、借入額を先に決めてしまっているかのどちらかです。
いつから削りはじめればいいですか?
全部書き出して、合計が出てからです。先に削ると「そもそも入れていなかったもの」と「削ったもの」の区別がつかなくなります。削る順番は親記事に書きました。
1. 見積もりを待つ前に、項目を全部書き出す。金額は空欄でいい
2. 物件まわりは6行に分ける。「物件費用」とまとめると必ず抜ける
3. 設備資金と運転資金に分ける。公庫の書類がこの2つに分かれているから
4. 消費税は別の列で持つ。まとめて1.1倍にすると、非課税の項目でずれる
5. 運転資金は私は2ヶ月で置いたが、できれば3ヶ月。生活費は別
6. 見積書が来ない費用が抜ける。研修費・POS・支払手数料・法定福利・消耗品・会議費や交通費
7. 士業は1社目で決めない。私は社労士を変えて当初の6分の1以下になった
8. 法人なら司法書士(登記)の行を最初から入れる
9. 借入額は、積み上げた結果として出す。先に決めない
10. 削るのは、いちばん最後
今日、空の表を作るところから始めます。
金額が1つも入っていなくても、意味があるって分かりました。
それでいいと思います。行が先、金額はあとです。
次は、この総額をもとに初年度の12ヶ月を月次で置いていく話になります。
この記事は、私自身が2024年から2025年にかけて恵比寿で1店舗を開業したときに作成した事業計画書をもとに書いています。費用項目・分類・金額は、お店の形や地域、時期によって変わります。私は税理士・社会保険労務士・司法書士ではありません。税務・労務・登記については各士業に、融資の書類や資金の区分については金融機関にご確認ください。
