融資の面談って、何を持っていくんですか。
あと、どんなことを聞かれるのかも……想像がつかなくて、それがいちばん不安です。
持っていったものも、聞かれたことも、この記事で全部出します。
ただ、その前にひとつ書かせてください。
私は、借りすぎました。
この記事の内容
開業資金の記事で「私は600万円かけました」と書きました。
あれは、お店をつくるのにかけた費用です。内装、美容器具、家電や什器、開業時の材料、集客の初期費用。お店の中身に消えたお金だと思ってください。
ただ、用意しなければいけなかったお金は、それだけではありませんでした。
内装・器具・家電・材料・集客。記事1で書いた600万円は、ここです。
物件の初期費用(保証金・礼金・仲介手数料・前払家賃・火災保険・保証会社)、運転資金、士業まわりの費用。ここが、まるごと乗ります。
この2つを足したものが、実際に用意した金額です。そのうち4分の1くらいを自己資金で持って、残りを日本政策金融公庫から借りました。
600万円だと思っていたら、もっと必要だったということですか。
そうです。お店をつくる費用しか見ていない人が、いちばん危ないです。
物件の初期費用と運転資金は、見積書に出てきません。自分で足さないと、資金計画から抜け落ちます。
そして、ここからが本題です。
今の私なら、ここまで借りません。
借りすぎましたし、かけすぎました。1名でスタートするなら、この半分以下でも開けたと思っています。
なぜ大きくなったかは、記事1に4つ書きました。内装に手を入れたこと、最初から人を入れる前提で組んだこと、集客を厚く積んだこと、工事期間中の生活費。どれも、削ろうと思えば削れたものです。
借りた金額が大きいほど、毎月返す金額も大きくなります。それは開業した次の月から、ずっと続きます。ここが、私がいちばん軽く考えていたところでした。
ここからは、事実だけを書きます。私が用意したのは、この15点です。
このほか、面談のあとに印鑑・印鑑証明・振込先口座が必要になりました。美容組合に入る場合や、生活衛生の融資を使う場合は、資金証明書や都道府県知事の推せん書が必要になることもあります。
これは私の場合です。法人か個人か、業種、地域、制度によって変わります。必要書類は必ず公庫にご確認ください。
自宅の賃貸借契約書まで要るんですか?
お店の話じゃないですよね……。
そこが、私もいちばん意外でした。
見られるのは、事業のことだけではありません。暮らしのほうも見られます。
印をつけた3つ——すべての通帳・公共料金の支払い履歴・自宅の賃貸借契約書。この3つは、事業の書類ではありません。生活の書類です。
どれも「この人は、毎月きちんと払っている人か」を見るための書類です。
家賃を毎月払えている人なら、返済も毎月できるだろう——そういう見方をされているのだと思いました。
そして、この3つはあとから作れません。いちばん最初にやることの記事で「お金まわりの身辺確認から始めてください」と書いたのは、ここにつながります。
データを送るのではなく、紙の束にして持っていきました。表紙をつけて、目次をつけて、一冊にしています。
中身は、この連載でひとつずつ記事にしているものです。創業動機、企業理念、事業経験、スタッフ計画、コンセプト、商品・サービス、ターゲット、競合サロン、販売戦略、初期費用と資金調達計画、収支シミュレーション、中期経営計画。そこに企業概要書と設備投資計画書を足して、14ページでした。
製本まですると、やっぱり印象が違いますか?
正直に言うと、「これを出したから通った」とは思っていません。
ただ、話が早かったのは間違いないです。「その話は5ページ目に書いています」で進められましたから。
面談は、聞かれたことに答える時間です。答えが1冊にまとまっていれば、探す時間が要りません。その分、話す時間が増えます。
作り方は事業計画書の記事に、1ページずつ書いています。
ここは、正直に書きます。
本番の前に、公庫に出向いて模擬面談をしてもらいました。
これは前職と公庫のつながりで用意してもらったもので、誰でも同じことができるのかは、私には分かりません。
ここを「誰でもできます」と書くと嘘になるので、そのまま書いておきます。
そのうえで、効果ははっきりありました。
本番で、まったく緊張しなかったんです。
何を聞かれるのか。どういう空気なのか。一度知っているだけで、こんなに違うのかと思いました。
面談で落ち着いて話せるかどうかは、準備の量よりも「知っているかどうか」で決まるのだと思います。同じ書類を持っていても、初めての人と2回目の人では、話せる量が変わります。
私と同じ形は用意できないかもしれません。ただ、「一度、経験しておく」こと自体は、狙って作れるはずです。
申し込みの前に相談できる窓口があります。そこで計画書を見てもらうだけでも、聞かれる論点は見えてきます。
創業の相談会をやっているところがあります。相談は無料のことが多いです。
税理士や中小企業診断士など。顧問をお願いする前提なら、事前に相談できることがあります。
いちばん手軽です。計画書を見ずに、5分で説明できるか。できなければ、まだ自分のものになっていません。
1〜3は、私が実際に使ったものではありません。使い勝手や条件については書けないので、各窓口にご確認ください。ここでお伝えしたいのは「一度経験しておくと本番が変わる」という一点です。
覚えているのは、この5つです。そして、どれも事業計画書に書いてあったことでした。
本業をどうするのか。お店に、どれだけ時間を割けるのか。ここは私の場合に特有の質問でした。
何で返すのか。収支シミュレーションのページで答えました。客数と単価を出して、そこから返済分が残るかを見せています。
そして、この5つよりもっと長く聞かれたのが、自己資金の話でした。そこはいちばん最初にやることの記事に、まるごと書いています。
変わった質問とか、答えられない質問はなかったんですか。
なかったです。全部、計画書に書いてあることでした。
逆に言うと、計画書を作り込んでおいて本当に良かったということでもあります。作っていなければ、その場で考えて答えることになっていました。
面談は、新しいことを聞かれる場ではありませんでした。
計画書に書いたことを、自分の言葉で説明できるかを見られる場でした。
だから、計画書を人に書いてもらうと苦しくなります。書いた本人でないと、答えられません。
面談には、技術の責任者である妻も一緒に行きました。お店の中のことは妻のほうが答えられるので、そこは任せています。2人でやるなら、2人で行ったほうがいいと思います。
申し込みと面談が、オープンの約2ヶ月前。決定が、約1ヶ月前。だいたい1ヶ月です。
その1ヶ月って、ただ待つ時間ですよね……。落ち着かなそうです。
私もそう思っていました。
ところが実際は、やることが多くてびっくりしたんです。今でも覚えています。
事業計画書に書いた予定どおりに、動かしていました。お金を使わなくても、契約印を押さなくてもできることが、思っていたよりたくさんありました。
「融資が決まってから動く」ものと、「今から動ける」ものは、はっきり分かれます。
発注と契約は待つ。調べる・作る・登録するは、待たなくていい。
もしこの1ヶ月を本当にただ待っていたら、そのぶんがオープン後にずれ込んでいました。開ける直前がいちばん忙しくなるので、前に倒せるものは全部倒しておいたほうがいいです。
やることの全体像は、チェックリスト(12ブロック・78項目)にまとめてあります。
金額そのものは書きませんが、決まり方は書けます。ここを知らずに借入額を決めると、あとで効いてきます。
私は元金均等・10年で借りました。元金均等というのは、毎月返す元金が一定という返し方です。
借入額 ÷ 120ヶ月 = 毎月の元金(10年で借りた場合)
これに利息が乗ります。利息は残高に対してかかるので、返すほど軽くなっていきます。
あてはめると、こうなります。
200万と800万で、毎月5万円も違うんですね。
そこです。毎月5万円は、家賃1つ分に近い金額です。
そしてこれが10年続きます。借りるときは1回の判断ですが、返すのは120回です。
まつげサロンの利益で、毎月5万円の差は小さくありません。客単価8,000円なら、月に6〜7人ぶんです。それを毎月、10年です。
金利、返済期間、返済が始まる時期は、制度と条件によって変わります。据置期間を設けられる場合もあります。必ず公庫にご確認ください。私はここで、自分の条件だけを書いています。
最後に、いちばん書きたかったことを書きます。
「借りられる額」と「借りるべき額」は、違います。
計画が通れば、貸してもらえます。でも、返すのは自分です。
公庫は、事業計画が通れば貸してくれます。「借りすぎですよ」とは言われません。それを判断するのは、こちら側です。
記事1で、開き方を3つに分けました。もう一度、返済の側から見てみます。
マンションの一室を、家具と照明でしつらえる。借入が小さくなるので、毎月の返済も軽くなります。売上が読めない最初の1年を、いちばん楽に越えられる形です。
私はここでした。世界観は作れます。ただ、そのぶん借入が増えて、毎月の返済が10年ついてきます。ここを軽く見ていました。
でも、内装にはこだわりたいです……。
分かります。私もそうでした。だから同じことをしました。
ただ、こだわるのは2店舗目でもできます。1店舗目でこだわると、お客様がつく前から固定費が重くなります。
順番の話です。お客様がついてから、作り込む。逆にすると、戻せません。
もう一度書きます。私は借りすぎました。
お店は気に入っていますし、後悔はしていません。ただ、もう一度1名で開くとしたら、私は半分以下で組みます。そして、そのほうが夜は眠れると思います。
面談には、何を持っていけばいいですか?
私が用意したのは上の15点です。ただしこれは私の場合で、法人か個人か、業種、地域、制度によって変わります。必要書類は必ず公庫にご確認ください。
自宅の賃貸借契約書や、公共料金の履歴まで本当に必要ですか?
私は用意しました。事業の書類だけでなく、暮らしの書類も見られます。「毎月きちんと払っている人か」を見るためだと思っています。ここはあとから作れないので、早めに整えておいてください。
事業計画書は、製本しないとダメですか?
決まりではありません。私は製本して持っていきました。「これを出したから通った」とは思っていませんが、話が早かったのは確かです。「その話は5ページ目に」で進められます。
面談では、どんなことを聞かれますか?
私はなぜ恵比寿か/なぜアイサロンか/人は雇うのか/本業との兼ね合い/返済の原資を聞かれました。そしていちばん長かったのは自己資金の話です。どれも計画書に書いてあることでした。
模擬面談は、誰でも受けられますか?
分かりません。私の場合は前職と公庫のつながりで用意してもらったもので、一般的な仕組みなのかは私には判断できません。ただ「一度経験しておくと本番が変わる」のは確かです。公庫の創業相談、商工会・商工会議所、認定支援機関など、聞ける窓口はあります。
申し込みから決定まで、どれくらいかかりますか?
私の場合は約1ヶ月でした。オープンの2ヶ月前に申し込み・面談、1ヶ月前に決定です。期間は状況によって変わります。また決定した日と、お金が入る日は別です。ここは記事1に書きました。
待っているあいだは、何をすればいいですか?
発注と契約以外は、全部やれます。私は公式LINE、Googleビジネスプロフィール、予約システム、ホットペッパーのページ作り、器具や家電の下見をしていました。やることが多くてびっくりしたのを覚えています。前に倒せるものは倒しておいてください。
いくら借りるのが正解ですか?
正解は出せません。ただ「借りられる額」と「借りるべき額」は違います。10年で借りるなら借入額÷120ヶ月が毎月の元金です。その金額を、10年払い続けられるかで考えてみてください。私は借りすぎました。
1. お店をつくる費用だけ見ていると危ない。物件の初期費用と運転資金が、まるごと乗る
2. 面談に用意したのは15点。ただし条件で変わるので、公庫に確認を
3. 意外だったのはすべての通帳・公共料金の履歴・自宅の賃貸借契約書。暮らしのほうも見られる
4. 事業計画書は製本して持参。通るためというより、話を早くするため
5. 一度、模擬面談をやっておくと本番で緊張しない。私は公庫でやってもらえた
6. 面談で聞かれたのは全部、計画書に書いてあったこと。だから自分で書く意味がある
7. 待っている1ヶ月は暇ではない。発注と契約以外は全部やれる
8. 借入額÷120ヶ月が毎月の元金。借りるのは1回、返すのは120回
9. 「借りられる額」と「借りるべき額」は違う。私は借りすぎました
正直に書いてくださって、逆に安心しました。
私は1人で始めるので、まず小さく借りるところから考えてみます。
それがいちばんいいと思います。
小さく始めて、お客様がついてから大きくする。この順番なら、失敗しても戻れます。
次は、その初期費用をどう組み立てるかの話です。
この記事は、私自身が2024年から2025年にかけて恵比寿で1店舗を開業し、日本政策金融公庫から融資を受けた経験をもとに書いています。書類・条件・金利・審査は、制度や時期、申込先によって変わります。私は税理士・金融の専門家ではありません。融資に関することは必ず金融機関に、税金については税務署にご確認ください。記事中の毎月の元金は、元金均等・10年で借りた場合の計算例であり、利息は含んでいません。
