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まつげサロン開業ロードマップ01 事業計画書この記事
PHASE 1STEP 01の詳しい記事

商圏調査は
何を見るのか

半径500mに、40代女性は1,659人。
実際に書いたページを開きながらお話しします。

この記事の親事業計画書は、どう書くのか
アイリストさん

事業計画書に「商圏」の欄があるんですが、何を書けばいいのか分かりません。

統計とか、調べないといけないんですよね……。

阿部

調べます。うちは半径500m・1km・2kmの3段で、女性の人口を年齢別に全部出しました。

そのページ、いま手元にあるので開きますね。半径500mに、40代の女性が1,659人。そういう書き方をしています。

……そこまでやらないとダメですか。

やったほうがいいです。ただ、正直に言っておきたいことが2つあります。

ひとつは、あれだけ調べたのに、恵比寿を選んだ決め手は数字ではなかったということ。

もうひとつは、統計をどれだけ見ても分からないことがあったということです。うちの場合は日曜日でした。

この記事の内容

  1. 順番は、商圏が先です
  2. 半径0.5km・1km・2kmの3段で見る
  3. 半径500mに、女性は9,837人
  4. ターゲットを、2つ置きました
  5. 「ズレる」は、計画書に書いてありました
  6. 人口のほかに、見たもの
  7. それでも、決め手は数字ではありませんでした
  8. 競合から見えたことの、読み直し
  9. 数えることより、動かすこと
  10. 統計に「曜日」は載っていません
  11. いまなら、どうするか
  12. よくある質問
  13. まとめ

順番は、商圏が先です

手を動かす前に、順番の話をさせてください。

うちの開業前スケジュール表には、事業計画書の作業がこう並んでいます。

見ていただきたいのは2つです。

1つ目。ペルソナが先、商圏があと。誰に来てほしいかを決めてから、その人がこの街にいるかを調べています。逆にすると、街の統計を眺めながら「じゃあ誰を狙おうか」と考えることになって、まとまりません。

2つ目。商圏に2週間、競合に1ヶ月。商圏のほうが短いんです。

商圏のほうが、大変そうに聞こえるんですけど。

数字を集めるだけなので、実は早いんです。

それに商圏調査は「分析」というより「確認」でした。決めたペルソナが、この街にいるかどうか。それを確かめる作業です。

半径0.5km・1km・2kmの3段で見る

うちの事業計画書の商圏のページは、いちばん上にこう書いてあります。

調査地点と、エリアの区切り

調査地点:東京都渋谷区恵比寿西

1次エリア:半径0.5km(徒歩圏内)

2次エリア:半径1km(自転車圏内)

3次エリア:半径2km(バス・バイク圏内)

この3段に分けるのが、いちばん大事なところです。

「商圏」とひとことで言うと、どこまでを数えていいのか分からなくなります。でも「歩いて来られる範囲」「自転車で来られる範囲」「バイクや電車で来る範囲」と分けると、迷いません。

そしてまつげサロンで本命になるのは、1次エリア(徒歩圏内)です。4〜6週に一度、繰り返し来ていただく店だからです。遠いと、続きません。

女性の総人口(3段 + 参考)

1次エリア(半径0.5km)9,837人
2次エリア(半径1km)30,217人
3次エリア(半径2km)125,206人
渋谷区参考125,976人

3次エリア(半径2km)で、ほぼ渋谷区1つぶんの人口になります。広く取れば数字は大きくなりますが、その人たちが毎月通ってくれるわけではありません。

半径500mに、女性は9,837人

本命の1次エリア、つまり歩いて来られる範囲を、年齢別に見ます。

1次エリア(半径0.5km)の女性人口

東京都渋谷区恵比寿西を中心とした徒歩圏内

20代1,105
30代1,610
40代1,659
50代1,226

事業計画書の商圏調査ページから、数字を書き出したものです。40代がいちばん多く、20代がいちばん少ない。差は1.5倍あります。

この街には、20代より40代のほうが多い。1.5倍です。

これは、あとで効いてきます。競合の話のところで、もう一度この数字に戻ります。

ターゲットを、2つ置きました

ここが、いま読み返していちばん「よく書いたな」と思うところです。

商圏のページには、人口の表の下に2行だけ、こういう欄があります。

計画書に置いた2つのターゲット人口

コアターゲット人口1次エリア1,659人
ビジネスターゲット人口1次エリア2,715人

2次エリア(半径1km)では、コア5,136人/ビジネス7,710人。

コアとビジネスって、何が違うんですか?

数えている年代が違います。

コアターゲット=40代の女性。うちのペルソナの年代です。

ビジネスターゲット=20代から30代の女性。こちらのほうが数が多いです。

コアターゲット 1,659人

いちばん来てほしい人。店の作りも、メニューも、接客も、この人に向けて決めます。ペルソナはここから作りました。

ビジネスターゲット 2,715人

商売として、数が動く人。コアより多い。実際にお店を回していくのは、こちらの人数です。

1,659人と2,715人。ビジネスターゲットのほうが1,000人以上多い。この差を、開業前に数字で見ていました。

「ズレる」は、計画書に書いてありました

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

ペルソナの記事で、私はこう書きました。

ペルソナの記事に書いたこと

うちのペルソナは40歳です。
でも、クーポンサイトから来るお客様は20代が多いという印象です。
ペルソナと、実際に来る人はズレます。

あれを書いたとき、私は「開けてみて分かったこと」として書きました。

でも、商圏のページを開き直したら、そのズレは開業前から計画書に書いてあったんです。

計画書の商圏ページ開業前

コアターゲット(40代)1,659人

ビジネスターゲット(20〜30代)2,715人

開業してから実際

ペルソナ40歳のキャリアウーマン

クーポンサイトから来る方20代が多い

形が同じです。

「本命は40代。でも数が動くのは20〜30代」。これを開業前に2行で書いておいて、開業後に同じことが起きた。ズレたのではなく、書いたとおりになっただけでした。

ここが、商圏調査をやる意味だと思います。「その街に何人いるか」を知るためではありません。本命の人と、数が動く人が、別々にいるということを先に知るためです。この2つを分けて書いておくと、開業後に「思っていた人と違う」と慌てなくなります。

人口のほかに、見たもの

商圏のページには、人口以外の数字も並べています。全部は載せませんが、実際に見たのはこのあたりです。

1

世帯と、住まいの形

1次エリアの主世帯は11,198世帯。そのうち共同住宅が9,708世帯で、9割近くがマンション・アパートです。持ち家4,449に対して民営の借家が5,967。借りて住んでいる人のほうが多い街だと分かります。

2

働きに来ている人

1次エリアの従業者数を業種別に見ました。卸売・小売5,426人/情報通信4,516人/宿泊・飲食3,031人/金融・保険2,446人。住む街であると同時に、働きに来る街だということです。

3

駅の乗降客数

JR恵比寿駅は1日平均121,103人。JR東日本の駅で23位です。内訳は定期外63,552人・定期57,551人で、ほぼ半々。通勤で使う人と、遊びに来る人が同じくらいいます。

4

同じ業種の人数

「生活関連サービス業・娯楽業」の従業者は1次エリアで955人。美容室もサロンもここに入ります。競合の実数を、店の数ではなく人の数で見るための欄です。

これらを全部足して、計画書の本文にはこう書きました。

事業計画書に書いた一文

商圏はオフィスとしても住宅地としても近年活性していて、近辺で働くターゲットや近辺に住むターゲットが多数存在する。

数字を並べたページの結論は、この2行だけです。数字は、この2行を言い切るために集めたものでした。

それでも、決め手は数字ではありませんでした

ここは正直に書きます。

ここまで調べて、恵比寿に決めたんですね。

それが、逆なんです。

恵比寿で店を持つのが夢でした。それと、いま住んでいるのも恵比寿です。

調べたのは、そのあとです。

もうひとつ、大人世代の方が多い街なのではないかという感覚がありました。これも数字を見る前の話です。

じつは、この「住んでいる」ことは計画書にも書いています。

事業計画書の続きの一文

また、事前リサーチとして、私たちが住んでいるので客層のイメージがつきやすいのは非常に好都合と言える。

じゃあ、統計を調べたのは何のためだったんですか?

やめる理由がないかを、確かめるためです。

選ぶ理由は、たいてい数字の外にあります。でもやめる理由は、数字にしか出てきません。

もし40代の女性が1次エリアに200人しかいなかったら、私は恵比寿をあきらめたと思います。夢でも、住んでいても、そこは動かせません。

1,659人いたから、進みました。商圏調査の役割は、それだけと言ってもいいくらいです。

「夢だから」で選ぶことを、私は否定しません。その気持ちがないと、開業の準備は続きません。ただ、夢の隣に数字を置いてください。数字が止めなければ進む、止めたらやめる。そう決めておくと、夢のほうも守れます。

ちなみに物件は、恵比寿駅から徒歩5分以内で探していました。これがなかなか見つからなくて、時間がかかっています。決まったのは、恵比寿駅から徒歩5分・代官山駅から徒歩2分のビルの5階でした。物件探しの話は物件の回に書いています。

競合から見えたことの、読み直し

競合調査そのものは集客の回に書いたので、ここでは結果だけ振り返ります。

ホットペッパービューティーで恵比寿292件を検索し、30〜40代を狙っている14店に絞りました。その14店のターゲット層は、こうでした。

14店が狙っていた年代

20代を狙っている店12店
30代を狙っている店2店
40代を狙っている店0店

集客の回では、これを「恵比寿では40代が空いている」と読みました。

いま読み返すと、少し違うと思っています。

あれは恵比寿の話ではなく、ホットペッパービューティーの話だったのではないか、と。

あの媒体を使っているお客様自体が、20代から30代に寄っているんだと思います。だからお店の側も、そこに合わせて書いている。

ここで、さっきの人口と並べてみてください。

同じ恵比寿の、2つの数字向きが逆

街の人口(半径500m)40代 1,659人 > 20代 1,105人
40代のほうが1.5倍多い

掲載媒体の競合14店20代狙い 12店 / 40代狙い 0店
ほぼ全部が20代を向いている

街と、媒体が、逆を向いています。

これが、商圏調査と競合調査を両方やる理由だと思っています。片方だけだと、片方の絵しか見えません。

競合だけを見ていたら「20代を狙うのが正解らしい」と思ったはずです。商圏だけを見ていたら「40代が多いから40代でいこう」で終わって、その40代がどこから来るのかを考えないままだったはずです。

数えることより、動かすこと

ミニモも調べました。恵比寿駅10分圏で177人。店ではなく、人の単位で数えています。

177人。多いですね。

多いです。ただ、この人数はあくまで10分以内の人ですし、正直なところ——

数えることより、動かすことのほうが大事です。

ミニモの検索結果は、初期表示が「おすすめ順」です。その順位を上げて、予約数を増やす。そこにしか結果は出ません。

177人という数字は、「ここは人が多い場所だ」と知るためのものです。知ったあと、順位を上げるために手を動かさなければ、数えた意味がありません。

商圏調査は、ここで止まりがちです。調べて、表を作って、事業計画書に貼って、終わり。調べた数字は、そのあと何をするかを決めるためにあります。1,659人と分かったなら、その1,659人にどう届くのか。177人いると分かったなら、その中で何位に入るのか。そこまでが1セットです。

統計に「曜日」は載っていません

最後に、誤算だったことを書きます。

あれだけ数字を並べたのに、開けてみるまで分からなかったことがありました。

思っていたのと違ったこと

1. 日曜日が、意外に弱い

2. 代官山駅は、特に日曜日の人通りが少ない

人口も、乗降客数も、従業者数も、全部「1日平均」や「総数」です。曜日の情報が、どこにも入っていません。

恵比寿駅1日121,103人。この数字は、月曜日も日曜日も同じ顔をしています。でも実際の街は、曜日でまったく違いました。

それは、どうやったら事前に分かるんですか?

行くしかありません。それも、曜日を変えて

私は恵比寿に住んでいるので、街のことは分かっているつもりでした。それでも外しました。

住んでいる人でも外すということは、住んでいない街ならもっと外します。候補の物件の前に、平日の昼・平日の夜・土曜・日曜と、最低4回は立ってみてください。

それと、うちのように2つの駅から来られる立地の場合、駅ごとに人通りの曜日の癖が違います。両方の駅から歩いてみるのをおすすめします。

いまなら、どうするか

これから「この街で成立するか」を確かめる方へ、お伝えしたいことは2つです。

1

物件を、多く見ること

商圏は、地図の上の円ではありません。物件を見た数だけ、街の解像度が上がります。うちも恵比寿駅5分以内で探し続けて、なかなか見つかりませんでした。その時間が、結果的に街を見る時間になりました。

2

契約する前に、内装屋さんに現地を見てもらう

必ず、契約の前です。図面だけでは分からないことが現地にはあります。あとから分かると、契約したあとなので逃げられません。内装の回にも書きましたが、ここは譲らないでください。

2つ目は商圏の話ではないように見えるかもしれません。でも「この街で成立するか」は、最終的にその1件で決まります。街が良くても、その物件で成立しなければ意味がないからです。

そして、統計そのものについて。いま同じことをやるなら、数字を集める部分はもっと早く終わります。ただし——

早くなるところ

人口・世帯・従業者数・乗降客数を集めて表にする作業。ここは調べ方さえ分かれば、時間はかかりません。

変わらないところ

物件を見て回ること。曜日を変えて街に立つこと。ここは、いまも自分の足でしかできません。日曜日のことも、そうやってしか分かりませんでした。

よくある質問

商圏は、半径何kmで見ればいいですか?

うちは0.5km/1km/2kmの3段にしました。徒歩・自転車・バイクや電車、という分け方です。まつげサロンは4〜6週に一度、繰り返し来ていただく店なので、本命は1次エリア(徒歩圏内)だと考えています。

人口のデータは、どこで調べるんですか?

国が公開している統計が元になっています。事業計画書のフォーマットに商圏調査の欄がついていることも多いので、まずお使いのフォーマットを確認してみてください。無ければ、自治体の統計ページから拾えます。

ターゲット人口は、1つでいいですか?

2つ置くことをおすすめします。うちは「コアターゲット(40代)1,659人」と「ビジネスターゲット(20〜30代)2,715人」を分けて書きました。本命の人と、数が動く人は違います。開業後に「思っていた人と違う」と慌てないための2行です。

競合が全部20代を狙っていたら、20代を狙うべきですか?

その前に街の人口を見てください。うちの場合、掲載媒体の競合はほぼ全部20代を向いていましたが、街の人口は40代のほうが1.5倍多かったです。媒体の客層と、街の人口は別のものです。

その街に住んでいれば、商圏調査は要りませんか?

要ります。私は恵比寿に住んでいますが、日曜日の人通りを外しました。住んでいると「分かっているつもり」になるぶん、かえって危ないかもしれません。

数字が良くない街は、やめたほうがいいですか?

私は「やめる理由がないか」を確かめるために調べると考えています。選ぶ理由は数字の外にあることが多いですが、やめる理由は数字にしか出てきません。数字が止めなければ進む、止めたらやめる。そう決めておくと判断がぶれません。

街には何回行けばいいですか?

曜日を変えて、最低4回(平日の昼・平日の夜・土曜・日曜)は立ってみてください。統計に曜日は載っていません。複数の駅から来られる立地なら、駅ごとに歩いてみてください。

まとめ

持ち帰ってほしいこと

1. 順番はペルソナ → 商圏 → 競合。商圏は「分析」ではなく「確認」

2. エリアは徒歩・自転車・それ以上の3段で区切る。本命は徒歩圏内

3. ターゲット人口は2つ置く。コア(本命)とビジネス(数が動く)

4. その2つのズレは、開業後に必ず起きます。先に書いておけば慌てません

5. 街の人口と、媒体の客層は別のもの。両方を見ないと片方の絵しか見えません

6. 調べて終わりにしない。数えることより、動かすこと

7. 統計に曜日は載っていません。曜日を変えて、最低4回は街に立つ

8. 選ぶ理由は数字の外にあっていい。ただし、やめる理由は数字で確かめる

「夢だから」で選んでもいい、と言ってもらえて、少しほっとしました。

その隣に数字を置く、というのがすごく分かりやすいです。

数字が夢を否定することは、めったにありません。

でも数字を見ないまま進むと、あとで数字のほうから追いかけてきます。2週間でいいので、先に見ておいてください。

次は、この商圏から「何人来るか」を計算する話になります。集客プランの話です。

この記事の親にもどる事業計画書は、どう書くのか

この記事は、私自身が2024年から2025年にかけて恵比寿で1店舗を開業した経験と、そのときに作成した事業計画書の商圏調査ページをもとに書いています。掲載している人口・世帯・従業者数・乗降客数は、計画書作成時点で参照した公的統計の数値です。最新の数値はご自身でご確認ください。

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阿部弘康

阿部 弘康

株式会社CALM TOKYO 代表取締役
恵比寿でまつげパーマ&眉毛アイブロウサロンを運営

美容業界18年。化粧品メーカーの営業、美容サロン専門の広告会社を経て、サロン専門のコンサルタントとして独立しました。集客に関する書籍を2冊出しています。
2025年、恵比寿に自分たちの店を開きました。技術は、表参道で17年やってきたアイリストの妻が。経営とマーケティングは私が見ています。人の店を見てきた側と、自分で開いた側。その両方から書いています。

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