メニュー表が、どうしても決まりません。
いくつ作ればいいのかも、いくらにすればいいのかも分からなくて。
数から言うと、うちはホットペッパービューティーのクーポンを140個つくりました。
140……ですか?
桁を間違えていませんか。
間違えていません。新規向けと既存向けを、だいたい1対1で置いています。
ただ、施術のメニュー自体は8つです。ここが分かれているのが今日いちばんお伝えしたいことで、「メニュー」と「クーポン」は別の仕事なんです。
もうひとつ、正直な話をします。この記事の親記事で「客単価は1万円台の前半になりました」と書きましたが、いまは8,000〜10,000円です。計画より下がりました。その理由も書きます。
この記事の内容
価格から考えないでください。ここが最初のつまずきです。
でも、いくらにするかを決めないと、メニュー表が書けません。
逆です。先に、自分ができることを全部書き出してください。
私はこれを棚卸と呼んでいます。メニューを、バーっと羅列して書き出す。これが1番目です。
価格から入ると、「いくらなら来てくれるか」を先に考えることになります。そうすると、自分ができることの半分も出てきません。
棚卸は、順番を逆にする作業です。できることを全部出してから、そのうち何を売るかを決める。削るのはあとでいくらでもできます。
このとき、いま自分がやっていない施術も書いてください。研修を受ければできるもの、道具を買えばできるもの。それも棚卸の対象です。開業してから足すのは、思っているより大変だからです。
うちが棚卸して残したのは、この8つでした。
1. まつげパーマ
2. パリジェンヌラッシュリフト
3. アイブロウワックス
4. ハリウッドブロウリフト
5. マツエク
6. フェイシャルワックス
7. トリートメント(オプション)
8. セット(まつげ+眉)
そして、これらの組み合わせが乗ります。まつげパーマ+トリートメント、セット+トリートメント、といった具合です。
ここで主力を決めます。うちはセットです。まつげと眉を同じ日に仕上げてしまう。これを主力にしたのは、ペルソナの1日の過ごし方を見て、この人は2回来る時間がないと思ったからです。
主力は1つに決めてください。「どれも主力です」は、どれも主力でないのと同じです。主力が決まると、クーポンの並び順も、写真の順番も、接客での案内も、全部そこから決まります。
2番目の手順が競合調査です。ただ、価格については、見たものが2つあります。
妻が前職で、そして開業前にシェアサロンでつけていた価格です。自分たちが実際にその価格でお客様をいただけていたという事実があります。ここが土台になりました。
恵比寿という土地で、その価格が高いのか安いのかを調べました。同じ技術でも、街が変われば位置づけが変わります。
この2つを突き合わせて決めています。片方だけでは決まりません。
前職の価格だけで置くと、その街の相場を無視することになります。逆にエリアの相場だけで置くと、自分たちが根拠なく安売りすることになります。
競合の調べ方は、集客の回に書きました。恵比寿292件から14店に絞って、30時間かけて見ています。そのシートに価格の列があります。あれは、この作業のために作ったものでした。
シェアサロンでの実績がない場合は、どうすればいいですか?
前のお店でつけていた価格を思い出してください。そこが土台になります。
それも無い場合は、エリアの相場から入るしかありません。ただ、そのときは相場の真ん中に置かないようにしてください。真ん中は、いちばん比べられる位置です。
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
施術メニューは8つなのに、クーポンが140個。
なぜ、そんなに増やすんですか?
キーワード対策です。
クーポンの名前は、掲載媒体の中で検索に引っかかる文字列になります。数が多いほど、拾える言葉が増えます。
これは、メニュー表を作る話とは別の仕事です。整理すると、こうなります。
お店が何をできるか。実体の話です。増やすには技術と道具と時間が要ります。簡単には増やせません。
それをどう見せるか。言葉の話です。お金はかかりません。かかるのは、作る手間だけです。
同じ「まつげパーマ」でも、誰に向けて、いつ、どんな言葉で出すかで別のクーポンになります。それが積み上がって140個です。
内訳は新規向けと既存向けが、だいたい1対1です。ここも意識して分けています。
既存のお客様向けにも、半分も要るんですか?
要ります。というより、ここを作っていないお店がとても多いです。
新規のクーポンばかり増やすと、2回目のお客様が「自分向けのものが無い」と感じます。そして、次に安いお店を探しに行きます。
ただし、これは開業してから積み上げた数です。開業の日に140個あったわけではありません。事業計画書に書くのは施術メニューのほうで、クーポンは開けてから増やしていくものだと考えてください。最初から140個作ろうとしないでください。
4番目の手順です。価格が決まったら、名前をつけます。
私たちは、開業前に夫婦2人で1日かけて事業の中身を決める日をつくりました。ペルソナとコンセプトを決めた缶詰会議です。その日の16時から17時までの1時間が、メニューの時間でした。
そこで決めたのは、価格とネーミングです。
冠名、というのは何ですか?
メニュー名の頭につける言葉です。
【一重・奥二重の方へ】まつげパーマ、のような形です。
これがあると、お客様が「自分のことだ」と気づきます。メニュー名だけだと、気づかれません。
冠名は、あとから何度でも変えられます。価格を変えるより、はるかに気楽です。だから、迷ったら冠名のほうを動かしてください。
そしてここが、ペルソナとつながります。冠名に入れる言葉は、ペルソナの悩みの欄に書いてあるはずです。うちのシートには「年々まぶたが重くなり、20代に比べてまつ毛の長さや本数が減ってきている」と書いてあります。そのまま冠名になります。
ここは、正直に書きます。
親記事で、私はこう書きました。
全メニューを合計して100%になるように売上シェアを置く。
価格 × シェアを足し合わせると、客単価が計算で出てくる。
方法としては、これで合っています。ただ、当時どのメニューに何%を置いたかは、覚えていません。
そして、もう少し正直に言うと、そのときの%に厳密な根拠はありませんでした。実績がないので、置きようがないんです。
いまの感覚だと、だいたいこれくらいです。
いまの売上構成(体感)
数えた数字ではなく、日々見ている感覚です。トリートメントなどのオプションは、この上に乗ります。
開業前に置いた%と、いまの実感。ぴったり合っているとは言えません。それでも、あの作業に意味はあったと思っています。
理由は、%を置く作業が「主力を決める作業」だからです。セットに一番大きい数字を置いた時点で、うちはセットの店だと決めたことになります。その決定は、いまも生きています。
なので、これから書く方へ。%の根拠が出せなくて止まっているなら、止まらなくていいです。「主力はこれ」と決めて、そこに一番大きい数字を置いてください。当てにいく数字ではありません。
ここが、この記事の芯のもう半分です。
客単価下がった
事業計画書1万円台の前半
いま8,000〜10,000円
クーポンを140個も出したから、じゃないんですか?
安いクーポンで入ってくる人が増えれば、平均は下がりますよね。
私も最初はそう思っていました。でも、いちばん大きい原因は違います。
スタッフと店長で、単価が違うからです。
事業計画書を書いたとき、うちは実質1人分の価格で組んでいました。妻が施術する価格です。
そのあとスタッフが入りました。そして、スタッフの価格を、店長の価格より低く設定しました。
2つの価格が店の中に並んだ時点で、平均は下がります。計算するまでもありません。これは事故ではなく、こちらが選んだことです。
なぜ、わざわざ下げたんですか。
スタッフに、お客様をつけるためです。
新しく入った人には、指名がありません。実績も、口コミもゼロです。そこに店長と同じ価格を置くと、誰も選びません。
お客様の立場で考えれば当たり前です。同じ値段なら、経験の長いほうを選びます。だから、選ばれる理由を1つ作った。それが価格でした。
ただし、ここには守っている線があります。
スタッフの価格。お客様をつけるための、期間限定の投資だと思っています。担当のお客様が増えれば、上げていきます。
店長の価格。ここは下げません。店の価格の基準がここにあるからです。ここを下げると、店全体の位置が下がります。
店の中に2本の価格を持つ。これが、うちが選んだやり方です。
そしてこの構造を、事業計画書には書けていませんでした。書いたときは1人だったからです。
1人で開業する方へ。いまは1人分の価格で計画を作って構いません。ただ、2人目を入れた月から客単価は下がるということだけ、頭の隅に置いておいてください。下がったときに慌てないためです。下がったのではなく、投資している——そう説明できる状態にしておくと、判断がぶれません。
なお、うちは土日祝に+1,100円をいただいていますが、これは開業時には入れていませんでした。あとから足したものです。価格の細かい設計は、開けてからでも間に合います。
正直に書いておきます。価格は、いまも試行錯誤の途中です。
いちばん決まらないのが、当日限定のクーポンです。
その日に空きが出たときに出すもので、どこまで下げるかがずっと決まりません。下げれば埋まりますが、下げすぎると「待てば安くなる店」になります。
開業して1年以上たっても、決まらないものなんですか。
決まりません。いまも試行錯誤しています。
ただ、これを聞いて安心してほしいんです。開業前に完成させなければいけない、という話ではないので。
開業前に決めるのは、施術メニューと、その定価です。そこから先——クーポン、当日枠、割引の幅——は、お客様が来てからでないと決められません。
私がいま同じことをやるなら、この順番です。
できることをバーっと羅列して書き出します。絞るのはあとです。いまやっていない施術も書いてください。
同じ年代を狙っている店を絞って見ます。価格の列だけでなく、どう見せているかまで。
自分の実績のある価格とエリアの相場、両方を突き合わせます。片方だけでは決まりません。
いちばん最後です。ここは何度でも変えられます。だから最後で構いません。
この順番の意味は、後ろにいくほど変えやすいということです。
棚卸をやり直すのは大変です。価格を変えるのも大変です。でも冠名は明日変えられます。変えにくいものから決めていくと、手戻りが減ります。
最後に、これだけは書いておきたいことがあります。
価格は、下げるのは一瞬です。上げるのは、とても大変です。
下げるときは、お客様に説明が要りません。喜ばれるだけです。上げるときは、いま通ってくださっている方全員に説明することになります。
じゃあ、最初は高めに置いたほうがいいということですか?
高めに置く、というより「下げしろを持っておく」という感覚です。
クーポンで下げることは、あとからいくらでもできます。でも定価そのものを上げるのは、本当に大変です。
だから、定価は自分が受け取りたい金額で置いてください。「これでは来ないかも」と思って下げた定価は、そのまま何年も続きます。
集客の不安は、クーポンで解いてください。定価で解かないでください。これが、開業から1年やってみて、いちばん強く思っていることです。
メニューは、いくつくらいがいいですか?
施術メニューは絞ってください。うちは8つです。増やすと、道具も研修も時間も必要になります。ただしクーポンの数は別です。あちらは言葉なので、増やしても原価はかかりません。
クーポンを140個も作る時間がありません。
開業の日に140個あったわけではありません。開けてから積み上げた数です。最初は主力の1つと、その周りを数個で構いません。
既存のお客様向けのクーポンも要りますか?
要ります。うちは新規と既存をだいたい1対1にしています。新規ばかり増やすと、2回目の方が「自分向けのものが無い」と感じて、次に安い店を探しに行きます。
売上シェアの%に、根拠が出せません。
出せなくて構いません。うちも根拠はありませんでした。あれは当てにいく数字ではなく、「主力はこれだ」と決める作業です。主力に一番大きい数字を置いてください。
スタッフを入れたら、客単価は必ず下がりますか?
価格を分けるなら、下がります。うちはスタッフの価格を店長より低く置きました。指名も口コミもゼロの人に同じ価格を置くと、選ばれないからです。下がるのではなく、投資していると考えてください。
スタッフの価格は、いつ上げるんですか?
担当のお客様がついてきたら、です。店長の価格は下げません。そこが店の基準だからです。基準を残しておくと、スタッフの価格を戻す先がはっきりします。
当日限定の割引は、どこまで下げていいですか?
私もまだ決まっていません。いまも試行錯誤しています。ひとつ言えるのは、下げすぎると「待てば安くなる店」になるということです。埋まった安心と、その代償を毎回はかりにかけています。
1. 価格から考えない。棚卸から始める
2. 手順は 棚卸 → 競合調査 → 価格決定 → ネーミング・冠名(後ろほど変えやすい)
3. 施術メニューとクーポンは、別の仕事。前者は実体、後者は言葉
4. クーポンの数はキーワード対策。新規と既存を1対1で
5. 価格は自分の実績のある価格 × エリアの相場の両方から
6. 売上シェアの%に根拠は要らない。主力を決める作業だと思ってください
7. 2人目を入れると、客単価は下がる。それは投資です
8. 定価は、自分が受け取りたい金額で。集客の不安はクーポンで解く
「まだ決まっていない」と言ってもらえたのが、いちばん救いになりました。
全部決めてから開けるものだと思っていました。
決まりません。1年やっても決まらないところは決まらないです。
ただ、定価だけは開ける前に決めてください。そこだけは、あとから直すのがいちばん高くつきます。
この記事は、私自身が2024年から2025年にかけて恵比寿で1店舗を開業し、その後1年以上運営してきた経験をもとに書いています。価格やメニュー構成に唯一の正解はありません。掲載媒体の仕様も変わります。ご自身のお店とエリアに合わせて読み替えてください。
