収支シミュレーションって、売上をいくらで置けばいいんですか。
正直、当てずっぽうになりそうで……。
売上は、置きません。
客数と単価と日数を置くと、売上のほうが出てきます。
それ、当たるんですか?
当たりません。うちも、ぜんぜん当たりませんでした。
この記事では、計画と実績を両方出します。そして、なぜズレたのかも書きます。
この記事の内容
事業計画書の11ページ目が、この収支シミュレーションです。12ヶ月ぶんを、月ごとに置いていきます。
ここでいちばん大事なのは、「月商◯◯万円」と先に書かないことです。
「月商200万円くらいかな」と先に決めて、そこから逆算する。根拠がないので、面談で聞かれると答えられません。
客数・単価・日数を置くと、売上は計算で出てきます。聞かれたら、置いた根拠を1つずつ説明できます。
融資の面談で聞かれるのは、売上の金額そのものではありません。「なぜその数字なのか」です。積み上げていれば、そこに答えがあります。
技術者1人あたりの1日の人数 × 技術者数 × 営業日数 = 月の客数
うちが置いたのは、この3つです。
30日……お休みなしですか?
そうなんです。いま見ると、おかしいと思います。
1人あたり1日2名という置き方も、30日という置き方も、両方とも見直したほうがいいと思っています。
休みのない前提で計画を立てない。
定休日を決めて、そのぶん営業日数を減らす。そのうえで成り立つ数字かどうかを見ます。
30日で置くと、当然ながら数字はきれいに出ます。でも、実際にその30日を回すのは人です。ここは、計画を作るときにいちばん甘くなりやすいところだと思っています。
もうひとつ、置き方で気をつけたところがあります。
開業月をいちばん低く置いて、12ヶ月目にようやく目標に届く形にしました。
客数も、客単価も、少しずつ上げています。
客単価も同じで、目標は1万円台の前半ですが、開業月はそれより低く置いています。理由はメニューと価格の記事に書きました。
最初から満席・最高単価で置いた計画は、自分を追い込むだけです。
そして、面談でも「本当にできますか」と聞かれます。階段にしておくほうが、説明もしやすいんです。
収入が出たら、次は支出です。細かい項目を並べる前に、5つに分けます。
収入2つ
支出5つ + 利息
営業利益収入 − 支出
+ 減価償却費(お金は出ていかないので戻す)
− 元本返済(利益には出てこないが、お金は出ていく)
月間現金収支手元に残るお金
− 生活費
貯蓄ここがマイナスなら、貯金が減る
実際のシートは横に12ヶ月ぶんの列があるので、ここでは計算の流れだけを出しています。
原価率は、施術が約12%、物販が約60%で置きました。物販は原価が重いので、売れば売るほど儲かる、という商売ではありません。
1つ、私の計画から抜けていたものがあります。社会保険料です。「福利厚生」の行はありましたが、ゼロで置いていました。法人か個人事業かで扱いが変わるところなので、ここは必ず税理士・社労士にご確認ください。私は専門家ではありません。
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
お店の収支に、自分の生活費も入れるんですか?
入れてください。ここが見えていないと、判断ができません。
お店が黒字でも、生活費を引いたら貯金が減っていく——そういう時期が本当にあります。
うちのシートには、いちばん下に「生活シミュレーション」の欄があります。月間現金収支から生活費を引いて、貯蓄がいくら残るかを出す欄です。
開業してからしばらくは、貯蓄がマイナス。
途中でプラスに転じて、初年度トータルでは、わずかにマイナス。
つまり「初年度は、貯金が減る」と分かったうえで開いたということです。金額は人それぞれなので出しませんが、この欄を作ること自体をおすすめします。
知らずに減っていくのと、減ると分かって減っていくのは、まったく別です。
前者は焦って判断を誤ります。後者は、ただ計画どおりです。
税金と社会保険料の話を、ひとつ。うちのシートには、参考として「住民税・国民健康保険料・国民年金・所得税の予定納税(初年度)などを合計すると、利益の50%ほど」という注記が書いてあります。あくまで当時の想定で、正確なところは税理士にご確認ください。ただ「利益がそのまま残るわけではない」という感覚は、持っておいたほうがいいです。
私はこの会社とは別に、個人事業もやっています。その収入は、この計画書には載っていません。
でも、公庫の面談では聞かれました。
計画書は「このお店」の書類ですが、面談で見られているのは「この人が返せるか」です。別の収入があるなら、隠さずに話したほうがいいと思います。
ここからは実績です。2025年5月に開業して、12月までの8ヶ月を並べます。
来店客数|計画と実績(2025年)
数字は「実績/計画」。最初の3ヶ月は計画割れ、8月に計画の1.6倍、11月以降にまた下がっています。
ぜんぜん計画どおりじゃないですね……。
でも、8月がすごい。
そうなんです。1つも当たっていません。
ただ、ズレた理由は3つとも同じでした。
全部、人の問題です。季節でも、集客でもありませんでした。
開けたばかりで、店も人もまだ回っていません。ここは想定の範囲でした。
人が揃って、動けるようになった月です。回せる体制になると、数字はこう動きます。
11月に1名、12月に1名が退社しました。受けられる人数が減れば、客数も減ります。
お客様が来なくなったのではありません。受けられなくなったんです。
……すぐ募集をかければ、いいんじゃないですか?
ここが、いちばん想定外でした。
オープンのときは、求人サイトで10名の応募がありました。スタートダッシュは、よかったんです。
ところが2名が抜けたあとに同じことをしたら、まったくダメでした。
求人サイト
オープン前1つの媒体で10名の応募。効いた
退社のあと同じように出しても応募が来ない。片っ端から他の媒体にも登録しましたが、それでも来ませんでした。
「オープン景気」だったのかもしれません。新しい店には人が集まりやすい、ということなのだと思います。ただ、開けて半年経った店には、同じ効き方をしませんでした。
求人サイトに頼るのをやめました。
Google広告/LINE広告/自社の求人ページを作って運用、の3つに切り替えています。
正直に書くと、まだ結果は出ていません。始めたばかりです。
ただ毎週チェックすると決めています。数字を見て、直して、また見る。それを続ければ必ず成果に結びつくと思ってやっています。
収支シミュレーションを作るときに、「人が抜けたら」という行はありませんでした。いま作るなら、そこを考えます。1人抜けたときに、その月の客数がどれだけ減るのか。3名で回している店なら、3分の1です。
採用の話は求人の記事に書いています。
1年やってみて、収支シミュレーションで見るべき数字はここだと思っています。
損益分岐点。ここ一択です。
「いくら売れば、赤字にならないか」。これが分かっていれば、毎月の判断ができます。
うちのシートにも、いちばん下に損益分岐点売上高・損益分岐点比率・固定費・変動費・限界利益の行があります。作った当時は、正直そこまで見ていませんでした。
ただ、ここに落とし穴があります。
損益分岐点には、借入の返済が入りません。
会計上、赤字にならないライン。ここには借入の元本返済が入っていません。利益から引かれる費用ではないからです。
損益分岐点 + 毎月の元本返済。お金は出ていきます。ここまで届いて、ようやく手元が減りません。
だから損益分岐点とキャッシュフローは、両方いっしょに見る必要があります。片方だけだと、「黒字なのに、口座が減っていく」ことが起きます。
毎月の元本の出し方は、融資の記事に書きました。10年で借りるなら借入額 ÷ 120ヶ月です。借入を小さくすると、このラインが下がります。それが、「借りすぎない」ことの意味でもあります。
計画は計画、実績は実績です。一致しません。
それでも計画は大事です。ズレたときに、どこがズレたのかが分かるからです。
売上は、いくらで置けばいいですか?
売上は置きません。「技術者1人あたりの1日の人数 × 技術者数 × 営業日数」で客数を出し、客単価をかけると売上が出てきます。面談で聞かれるのは金額ではなく、その根拠です。
営業日数は、何日で置けばいいですか?
私は30日で置きましたが、いま見るとおかしいと思っています。休みのない前提です。定休日を決めて、そのぶん減らしてください。そのうえで成り立つ数字かどうかを見たほうがいいです。
最初の月から、目標の数字で置いてもいいですか?
おすすめしません。初月から計画割れが確定します。開業月をいちばん低く置いて、12ヶ月目にようやく目標に届く階段にしてください。面談でも説明しやすくなります。
生活費まで入れる必要がありますか?
入れてください。お店が黒字でも、生活費を引くと貯金が減る時期があります。うちは計画の時点で、最初の数ヶ月は貯蓄がマイナスでした。知らずに減るのと、減ると分かって減るのは別です。
社会保険料は、どう見ておけばいいですか?
私の計画では「福利厚生」の行をゼロで置いていました。抜けていたということです。法人か個人事業かで扱いが変わります。ここは税理士・社労士にご確認ください。私は専門家ではありません。
計画と実績は、どれくらいズレましたか?
1つも当たっていません。最初の3ヶ月は計画割れ、8月は計画の1.6倍、11月以降はまた下がりました。そしてズレた理由は3つとも人でした。季節でも集客でもありません。
スタッフが辞めたら、どうなりますか?
その人数ぶん、受けられる客数が減ります。3名で回している店なら3分の1です。うちは11月と12月に1名ずつ退社して、客数がそのまま下がりました。「1人抜けたときの月の客数」も計算しておいてください。
損益分岐点さえ分かれば大丈夫ですか?
大事ですが、それだけでは足りません。損益分岐点には借入の元本返済が入っていないからです。実際に必要な売上は損益分岐点 + 毎月の元本返済です。キャッシュフローと両方で見てください。
1. 売上は置かない。客数・単価・日数を置くと、出てくる
2. 客数は「1人あたり×人数×営業日数」のかけ算
3. 営業日数を30日で置かない。休みのない前提の計画は、いま見るとおかしい
4. 最初から満席で置かない。12ヶ月かけて目標に届く階段にする
5. 支出は5つのかたまり+利息。社会保険料の行を忘れない
6. 生活費まで入れる。「初年度は貯金が減る」と分かって開くほうが強い
7. 別の収入があるなら、面談で聞かれます。計画書に載らなくても
8. うちは1つも計画どおりになりませんでした。それでも計画は大事
9. 計画を崩したのは、人でした。1人抜けたときの客数も出しておく
10. いちばん大事なのは損益分岐点。ただし元本返済は入っていない
当たらない計画でも、作る意味があるんですね。
あります。ズレたときに、どこがズレたか分かるからです。
計画がなければ、8月に何が起きたのかも、11月に何が起きたのかも、ただの「良い月・悪い月」で終わっていました。
これで、02 資金調達の話は終わりです。お疲れさまでした。
この記事は、私自身が2024年から2025年にかけて恵比寿で1店舗を開業したときに作成した事業計画書と、2025年5〜12月の実績をもとに書いています。客数・単価・原価率・費用の構成は、お店の形や地域、時期によって大きく変わります。私は税理士・社会保険労務士ではありません。税金・社会保険料の扱いは各士業に、融資や返済の条件は金融機関にご確認ください。記事中の「利益の50%ほど」は、当時の資料に記載した想定であり、正確な税額ではありません。
