中期経営計画に何を書いたか。そして、取り下げない理由。
この連載の、最後の記事です。
3〜5年の計画って、開業前に作るものなんでしょうか。
正直、1年先も見えていないので……。
必須ではないと思っています。なくても開業はできます。
ただ、私は作りました。そして「5年で10億」と書きました。
10億……。1年目は、どうだったんですか。
そのとおりには、なりませんでした。
それでも、この計画を取り下げる気はまったくありません。
この記事は、その理由の話です。
1. 中期経営計画は必須ではない。でも、作るなら数字より先に決めることがあります
2. 数字だけの計画は、続きません。うちは4本の柱を別に立てました
3. 夢の計画と、現実のロードマップ。2つ持ってください
この記事の内容
事業計画書の最後に、中期経営計画のページを作りました。3〜5年の計画です。
書いたのは融資を申し込む前。見せたのは日本政策金融公庫と、開業をサポートしてくださった方です。
中身を、そのまま出します。
出店のモデルも決めていました。
エリア|恵比寿・中目黒・白金・代官山
選ぶ理由|40代の、可処分所得が高い女性が多く住んでいること
立地|最寄り駅から徒歩8分以内
規模|15坪・ベッド3台・スタッフ3人
そして、1店舗あたりの損益分岐点は月150万円、投資の回収は24ヶ月以内と置いています。
ここで1つ、書いておきたいことがあります。この計画は、人に見せる前提で作りました。
自分だけが見る紙なら、「なんとなくこうしたい」で済みます。
人に見せると決めた瞬間に、数字を入れざるをえなくなります。
私の場合は、公庫の面談で出す資料の一部でした。だから作り切れたというのが、正直なところです。
これから作る方は、誰に見せるかを先に決めてください。金融機関でも、一緒に働く人でも、家族でもかまいません。見せる相手がいない計画は、たいてい途中で止まります。
金額の内訳は、この記事では出しません。家賃や人件費は店ごとに違いますし、うちの実額に近い数字になってしまうからです。出しているのは「いくら売れば止まらないか」だけです。この1本があれば、ご自身のお店の数字で計算し直せます。
正直に書きます。10億という数字は、積み上げて出したものではありません。
先に決めました。
そのあとで、そこに届く形を考えました。
積み上げてから出した数字ではないので、根拠を聞かれると弱いです。それは自覚しています。
ただ、先に決めたからこそ作れたものがあります。
給与の記事に書いた等級8段がそれです。5年で10億と言ってしまったから、8段が要りました。1店舗で長くやると決めていたなら、3段で十分だったはずです。
掲げた数字が、作るものを決めます。
言っていることと、作ったものが合っているか。大事なのはそこだと思っています。
売上と店舗数だけの計画は、たぶん続きません。数字は、達成できなかった月に見たくなくなるからです。
だから、数字のほかに4本立てました。
この中で、いちばん最初に決まったのが3本目です。
「業界の平均年収500万円」。これは、どこから出たんですか。
店長と話していて出てきました。
「美容業界の賃金を上げることを目的にした店づくりをしていきたいね」と、いつも話していたんです。
だから、計画に入れました。
これは、計画を作るときに思いついた言葉ではありません。もともと二人で話していたことを、書いただけです。
ここが、計画づくりでいちばん大事なところだと思っています。計画の紙の上でひねり出した言葉は、たいてい続きません。ふだん話していることを、そのまま書く。それだけで、その項目は自分のものになります。
この500万円が、どれくらいの高さなのかを書いておきます。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、理容師・美容師の年収は300万円台です。年によって、また集計の区分によって幅がありますが、300万円台に収まっています。
500万円は、いまの水準から150万〜200万円ほど上です。
正直に書くと、この数字も積み上げて出したものではありません。
500万円あったら、夢があるな。そう思ったから書きました。
それは……1店舗の会社が書くことでしょうか。
1店舗だから書けない、ということはないと思っています。
自分の店のスタッフの年収を上げることは、1店舗でもできます。それが積み上がったものが、業界の平均です。
そして、ここを書いておくと、価格を下げにくくなります。安売りは、いちばん最初にスタッフの給与に返ってくるからです。
数字の統計は、地域・年齢・雇用形態・集計の区分によって変わります。ここに書いたのは公表されている調査の水準で、特定の店やエリアの実態を示すものではありません。ご自身で最新の数字をご確認ください。
ここは、はっきり書きます。
売上 1億円/店舗 3店舗/採用 累計15名
そのとおりには、なりませんでした。
いまも1店舗です。そして客数の記事に書いたとおり、開業した年の11月と12月に、スタッフが1名ずつ辞めています。
一人ひとりに事情があります。それは私が語ることではありません。
ここで書きたいのは、私の側の話です。
この連載で書いてきたことは、ほとんどが「そのとおりにならなかった」話でした。
開業資金|知らなかったから600万円かかりました
家賃|席が埋まる前提で決めていて、人が抜けても1円も下がりませんでした
広告費|想定は月5万円で、実際は年間126万円でした
予約システム|設定したつもりで、半年間、新規のお客様に1通も届いていませんでした
中期経営計画も、その列に並びます。
読んでいて、けっこうこたえます。
書いている私も、こたえます。
ただ、こう思っています。計画が外れたことと、計画を作ったことが無駄だったことは、別です。
計画がなければ、何がどれだけ外れたのかも分かりません。外れ方が分かるのは、書いてあったからです。
この計画は無謀です。それは、自分でも分かっています。
それでも、書き直す気はありません。
夢は、言葉にしないと絶対に叶わないからです。
私は、本を出したときも、独立したときも、この店を出したときも、全部そうやってきました。人に話して、声に出して。そうやって叶えてきました。
だから、この計画は書いたままにしておきます。
でも、現実とかけ離れたままでいいんですか。
よくありません。だから、もう1つ別に持っています。
うちには、いま2つの計画があります。
5年で10億。33店舗。
これは行き先です。取り下げません。
いまの数字から、次の一手まで。
こちらは足元です。数ヶ月ごとに作り直します。
2つ目のほうは、この記事には出しません。実際の月商も、現金も、スタッフごとの数字も入っている社外秘の資料だからです。
でも、持っているということは書いておきたいと思いました。
夢だけの人は、動けません。数字が大きすぎて、今日やることが決まらないからです。
現実だけの人は、伸びません。目の前を片づけるだけで1年が終わるからです。
地に足のついた計画をして、少しずつでも、日々挑戦して、日々成長し続ける。
2期目に入って、いちばん実感が変わったのはここでした。
私が教えるときの順番を、そのまま書きます。
紙に、5年後どうなっていたいかを書き出す。
そして「どんな状態が最低で、どんな状態が最高か」も書く。
数字からは始めません。いきなり売上を書こうとしても、根拠がないので手が止まります。
書き出したあとで、具体的にそれを叶えるにはどうすればいいかを考えます。ここではじめて数字が要ります。
「最低」と「最高」の両方を書くのには、理由があります。
ここが行き先になります。
遠慮すると、そのぶん小さく着きます。
ここが撤退しない線になります。
「これを下回ったら考え直す」が決まります。
片方だけだと、うまくいきません。最高だけを書くと、外れたときに全部が失敗に見えます。最低を先に書いておくと、「まだ線の上にいる」と分かります。
考えつかない、というときのやり方も書いておきます。この記事も、そうやってできました。AIに、自分にインタビューしてもらうんです。「なぜそう思ったのか」を聞かれて答えているうちに、自分の考えが言葉になります。頭の中にあるものと、言葉にできるものは違います。紙に向かって止まるくらいなら、質問してもらったほうが早いです。
この連載を読んでくださっている方の多くは、1店舗でやっていくつもりだと思います。
その人にも、あったほうがいいと思っています。
店舗数を増やさなくても、決めることは必ずあるからです。
人を雇うのか。雇うなら、いつ、何人か
席数をどうするのか。増やすのか、いまのままか
自分は、いつまで施術に入るのか
価格は、いつ見直すのか
どれも1年では決まらない話です。だから3〜5年で見る意味があります。
店舗数の行を消して、売上・利益・スタッフの人数だけにする。
それでも中期経営計画です。
開業前に、3〜5年の計画は必要ですか?
あったほうがいいと思いますが、必須ではありません。なくても開業はできます。ただ、人を雇うか、席をどうするか、自分がいつまで施術に入るかは、1年では決まらない話です。そこを決めるために3〜5年で見る意味があります。
融資のときに、中期経営計画は見られますか?
うちは提出物としては持っていっていないと思います。ただ事業計画書の中に入っていたので、目は通されていたかもしれません。持ち物の一覧は融資の記事に書いたとおりで、そこに中期計画は入っていません。必要な書類は金融機関・時期によって変わりますので、担当の方にご確認ください。
数字から書けばいいですか、それとも目標から書けばいいですか?
数字からは始めないでください。まず紙に「5年後どうなっていたいか」と「最低の状態・最高の状態」を書き出してください。そのあとで、具体的にどう叶えるかを考えます。いきなり売上を書こうとすると、根拠がないので手が止まります。
書くことが思いつかないときは、どうすればいいですか?
AIに、自分にインタビューしてもらうのがおすすめです。この記事も、そうやってできました。「なぜそう思ったのか」を聞かれて答えているうちに、頭の中にあるものが言葉になります。紙に向かって止まっているより、ずっと早いです。
売上の数字は、積み上げて出すべきですか?
そのほうが説明はしやすいです。ただ、私は先に決めました。10億という数字を先に置いて、そこに届く形をあとから考えています。根拠を聞かれると弱いですが、先に決めたから作れたものもありました。「5年で10億」と言ったから、給与の等級を8段作ることになりました。
数字以外に、何を書けばいいですか?
うちは4本の柱を立てました。資金調達/ブランド/業界・社会への貢献/スタッフ教育。数字だけの計画は、達成できなかった月に見たくなくなります。そして大事なのは、ふだん話していることをそのまま書くことです。紙の上でひねり出した言葉は続きません。
1店舗でやるつもりでも、中期計画は要りますか?
あったほうがいいと思います。店舗数を増やさなくても、人を雇うか、席数をどうするか、いつまで自分が施術に入るかは決めることになります。店舗数の行を消して、売上・利益・スタッフの人数だけにしてください。それでも中期経営計画です。
計画どおりにならなかったら、書き直すべきですか?
私は書き直していません。1期目は売上1億円・3店舗・採用15名と書いて、そのとおりにはなりませんでした。それでも取り下げていません。夢は、言葉にしないと絶対に叶わないと思っているからです。ただし、これとは別に、現実の数字で作る計画をもう1つ持っています。
「夢の計画」と「現実の計画」を2つ持つ意味は何ですか?
夢だけの人は動けません。数字が大きすぎて、今日やることが決まらないからです。現実だけの人は伸びません。目の前を片づけるだけで1年が終わるからです。行き先と足元は、別の紙に書いてください。足元のほうは、数ヶ月ごとに作り直すものです。
計画に「業界をよくする」のような目標を書くのは、大げさではないですか?
大げさでいいと思っています。ただし、ふだん自分が話していることに限ります。うちは店長と「美容業界の賃金を上げる店づくりをしたいね」といつも話していたので、そのまま書きました。言っていないことを書くと、続きません。
1. 中期経営計画は必須ではない。でも、決めることは1年では決まりません
2. 数字からは書かない。「5年後どうなっていたいか」を紙に書き出すのが先
3. 最低の状態と、最高の状態も書く
4. 思いつかないときはAIに自分をインタビューしてもらう
5. 掲げた数字が、作るものを決める(10億と言ったから等級が8段になりました)
6. 数字のほかに柱を立てる。うちは4本
7. ふだん話していることを、そのまま書く。ひねり出した言葉は続かない
8. 1店舗でも作れる。店舗数の行を消せばいいだけです
9. そのとおりにならなくても、取り下げなくていい
10. 夢の計画と、現実のロードマップ。2つ持つ
ここまで24本、うまくいかなかった話ばかりでした。
それなのに、読んだあとやってみたくなっています。不思議です。
最後に、これだけ書かせてください。
夢は、言葉にしないと絶対に叶いません。
私は、出版も、独立も、この店を出すことも、全部そうやって叶えてきました。人に話して、声に出して。
だから、この計画は取り下げません。無謀だと言われても、書いたままにしておきます。
ただし、言葉にするだけでは、何も起きません。
ここまで24本、うまくいかなかった話ばかり書いてきました。全部、動いたから分かったことです。動かなければ、失敗すらしませんでした。
ベビーステップでかまいません。行動した先にしか、成果はありません。
この記事は、私自身が2025年に恵比寿で1店舗を開業するにあたって作成した中期経営計画をもとに書いています。掲載している数字は、すべて計画上の目標であり、実績ではありません。また、収益モデルの金額の内訳(家賃・人件費などの個別の項目)は掲載していません。理容師・美容師の年収に関する水準は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の公表値にもとづく大まかな目安で、地域・年齢・雇用形態・集計区分によって変わります。最新の数字はご自身でご確認ください。本記事の内容は、事業の成果や計画の達成を保証するものではありません。資金調達・税務・労務に関する具体的な判断は、金融機関および税理士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
まつげサロン開業パック
事業計画書Excel(18シート・原紙)/記入例つき完成見本/各シートの解説PDF/開業チェックリストPDF/ホットペッパービューティー原稿シート/Googleビジネスプロフィール原稿シート
Excel 4点PDF 2点買い切りダウンロード

30分の無料相談を
お受けしています
開業の準備、資金計画、開いたあとの集客と求人。
まだ何も決まっていない段階でも大丈夫です。
無理におすすめすることはありません。